クローン病治療における栄養療法の有用性

中国における多施設共同前向き試験[海外データ]
Yang Q. et al.: Gastroenterology Report, 2024: 12(1), goad072

「禁忌を含む注意事項等情報」等は、Drug Informationをご参照ください。

試験概要

目的 本研究の目的は、クローン病治療における栄養療法の有用性を検証するために、多施設共同にて成分栄養剤を8週間投与し、その有効性・安全性を前向きに分析することを目的とする
試験デザイン 中国の4施設で実施された多施設共同前向き試験
対象 2019年3月から2021年12月の期間でクローン病と診断された24名
登録患者基準
  • 6歳~17歳のクローン病患者
  • 国際基準クライテリア(改定Porto基準)によるクローン病診断
  • PCDAI≥10
除外基準
  • 試験開始の2週間以内に抗生剤による治療を受けた患者
  • 試験開始の1か月以内に手術もしくは投薬(チオプリンや生物学的製剤など)を受けた患者
  • 過去に短腸症候群、重度の瘻孔、完全腸閉塞、がん、免疫系疾患と診断された患者
治療介入
  • エレンタール®8週投与(EEN:完全経腸栄養)
  • ポンプを使用した経鼻胃管投与(4~10日をかけて低用量・低濃度・低速度で適応し、その後通常濃度でEEN開始)
  • 年齢と体重に応じた投与量
  • 登録前にメサラジンを使用し、明らかな疾患の改善も副作用もみられなかった症例は、2g/日を超えない範囲で継続使用を許可。
  • ステロイドで寛解導入失敗した症例は登録前に20mg/日まで減量
  • 水を除くその他の飲食物、他の経腸栄養剤、生物学的製剤、抗生剤は使用不可
有効性評価 【主要評価項目】臨床的寛解(PCDAI<10)、粘膜治癒(CDEIS<3)
【副次評価項目】栄養評価指標
解析計画
  • 統計分析にはSASバージョン9.4(SAS Institute Inc. ノースカロライナ州ケアリー)を使用。
  • 統計的手法は、Mann-Whitney U検定、Paired t検定、Wilcoxon signed-rank検定が用いられた。
Limitation サンプルサイズが小さく、EENの特性により盲検試験を実施することが困難であった。
PCDAI:小児クローン病活動性指標 / CDEIS:クローン病内視鏡重症度指数
検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

患者背景(n=24例)

表:男性, n(%)、年齢, 歳, mean±SD、罹病期間, 月, mean±SD、家族歴、病変状態、病変部位、過去の手術歴、既往歴、薬剤使用歴、EEN中に使用された薬剤
B1:非狭窄・非穿孔 B2:狭窄 B3:穿孔 L1:小腸型 L2:大腸型 L3:小腸・大腸型 L4:上部消化管
Yang Q. et al.: Gastroenterology Report, 2024: 12(1), goa

試験スケジュール

タイムライン表:北京協和病院(患者:3名)、中山大学第六病院(患者:9名)、 北京小児医院(患者:3名)、上海交通大学附属小児医院(患者:10名が登録、脱落1名)、適応期間、治療期間
Yang Q. et al.: Gastroenterology Report, 2024: 12(1), goad072

炎症および栄養関連指標の変化[副次評価項目]

表:EEN前、EEN8週後、p値(名目上のp値)
BAZ:年齢別ボディマス指数Zスコア HAZ:年齢別身長 Zスコア IQR:四分位範囲 STRONGkidsスコア:栄養状態と成長に関するリスクのスクリーニングツール
Mann-Whitney U検定、Paired t検定
Yang Q. et al.: Gastroenterology Report, 2024: 12(1), goad072

EEN介入後の微量元素量の変化[副次評価項目]

表:Ca、鉄、葉酸、ビタミンB12、ビタミンD
Paired t検定
Yang Q. et al.: Gastroenterology Report, 2024: 12(1), goad072

(参考情報)EEN介入後のPCDAIスコアの推移[主要評価項目]

グラフ:縦軸がPCDAIスコア、横軸が患者
Paired t検定
Yang Q. et al.: Gastroenterology Report, 2024: 12(1), goad072

エレンタール®投与4週間で50.0%、8週間で66.7%の臨床的寛解率であった。

安全性

有害事象は3例6件であった(12.5%[3/24例])。1例で洞性不整脈/洞性徐脈が認められ、他の1例では洞性不整脈が2件認められた。また別の1例からは脂肪肝と一時的な下痢が認められた。
死亡例を含む重篤な副作用、投与中止に至った副作用は論文に記載がなかった。

安全性情報については最新の電子添文をご参照ください。

承認時の臨床試験(検証的試験)

■比較臨床試験1)
目的 エレンタール®配合内用剤、高カロリー輸液及び市販の経管栄養剤との投与方法及び有効性に至る種々の比較評価を行う。
試験デザイン 無作為化、非盲検、群間比較試験
対象 消化能力の低下した患者、消化不能な患者、高カロリー栄養補給の必要な患者
総症例数
  • エレンタール®配合内用剤:67例
  • 高カロリー輸液:24例
  • 市販の経管栄養剤:38例
試験方法 総カロリー量と総窒素量がほぼ同一となるように各薬剤の投与量を設定し、それぞれの用法用量に従って投与した。
評価項目 自覚・他覚症状、臨床検査値(栄養評価項目)、副作用
副作用については、DIの安全性情報を参照
結論 本剤は市販の経管栄養剤よりも栄養面、副作用の面など数々の点で優れ、高カロリー輸液とほぼ同等の有効性をもち、管理の面、生理的という面ではむしろ、高カロリー輸液よりも優れていた2)~5)
1)エレンタールⓇ配合内用剤 インタビューフォーム 2024年1月改訂(第9版)p.26
2)加固紀夫 他:薬理と治療, 1979; 7(11): 3607-3619
3)後藤洋一 他:薬理と治療, 1979; 7(12): 3931-3953
4)青木洋三 他:薬理と治療, 1979; 7(12): 3995-4002
5)酒井忠昭 他:薬理と治療, 1980; 8(1): 133-141

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