IBDの栄養療法

「禁忌を含む注意事項等情報」等は、Drug Informationをご参照ください。

エレンタール®による栄養状態の改善効果

目的 クローン病(CD)の粘膜炎症に対するElemental Dietの影響を調べること。
試験デザイン 単施設前向きのパイロット研究であった。
対象方法 活動期CD患者28名を対象に4週間、エレンタール®2,400mL/日を経鼻投与した。
評価項目 エレンタール®による治療4週後の臨床的、内視鏡的、組織学的治療効果を評価した。
統計解析 中央値間の差はMann-Whitney U検定を用いて比較した。Wilcoxon符号順位検定で評価し、p<0.05を統計的に有意とみなした。
安全性 安全性情報は論文中に記載はなかった。(安全性情報については最新の電子添文をご参照ください)
Limitation 長期の治療成績がないこと、服薬遵守状況を確認していないこと。
●検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

■治療前後の体重、BMI等の各種パラメータ

表:中央値(治療前、治療4週後)、p値
*Wilcoxon 符号順位検定(治療前との比較)、名目上のp値
Yamamoto T et al.: Inflamm Bowel Dis, 2005;11(6):580-588

エレンタール®のエネルギー比率

円グラフ:脂質1.5%、蛋白質(遊離アミノ酸)16.9%、糖質81.6%
石渡一夫編:静脈経腸栄養年鑑 2020-21,
株式会社ジェフコーポレーション, 2020:p.90-91より作図

腸管運動に対する栄養素の影響(健康成人)[海外データ]

試験方法 健康成人7名に脂質600kcal、糖質320kcal、蛋白質200kcalを投与し、活動電位の発生数を指標として、大腸の運動量を経時的に測定した。
結果 糖質や蛋白質を投与しても運動量にほとんど変化はないが、脂質の投与により腸管の運動量は有意(対応のあるt検定、投与後70分以外はp<0.05)に亢進した。
グラフ:縦軸が大腸運動量(スパイク回数/10分)、横軸が時間(分)
Wright SH et al.: Am. J. Physiol, 1980;238(2):G228-232より改変

比較臨床試験1)

目的 エレンタール®配合内用剤、高カロリー輸液及び市販の経管栄養剤との投与方法及び有効性に至る種々の比較評価を行う。
試験デザイン 無作為化、非盲検、群間比較試験
対象 消化能力の低下した患者、消化不能な患者、高カロリー栄養補給の必要な患者
総症例数〔•エレンタール®配合内用剤:67例 •高カロリー輸液:24例 •市販の経管栄養剤:38例〕
試験方法 総カロリー量と総窒素量がほぼ同一となるように各薬剤の投与量を設定し、それぞれの用法用量に従って投与した。
評価項目 自覚・他覚症状、臨床検査値(栄養評価項目)、副作用
結論 本剤は市販の経管栄養剤よりも栄養面、副作用の面など数々の点で優れ、高カロリー輸液とほぼ同等の有効性をもち、管理の面、生理的という面ではむしろ、高カロリー輸液よりも優れていた2~5)
※副作用については、結論に示す内容以外のデータが確認できないため、DIの安全性情報を参照ください。
1)エレンタールⓇ配合内用剤インタビューフォーム 2024年1月改訂(第9版)p.26
2)加固紀夫 他:薬理と治療, 1979;7(11):3607-3619
3)後藤洋一 他:薬理と治療, 1979;7(12):3931-3953
4)青木洋三 他:薬理と治療, 1979;7(12):3995-4002
5)酒井忠昭 他:薬理と治療, 1980; 8(1):133-141

〈参考情報〉成分栄養療法の寛解維持効果-RCTによる評価-

Takagi S, et al., Aliment Pharmacol Ther 2006;24:1333-1340
目的 1日に必要なカロリーの半分を栄養食で、残りの半分を自由食で摂取する維持療法(ハーフエレメンタルダイエット)の有効性を評価する。
対象方法 寛解状態のクローン病患者51例を栄養療法(経腸栄養剤900-1200kcal /日)実施群とControl群(自由摂取)にランダム割付を行い、再燃を評価した
主要評価 2年間の再発率(再発:CDAI 200以上または寛解導入治療が必要になった場合)
統計解析 再発確率はKaplan-Meier法で比較し、Cox比例ハザードモデルを用いて潜在的交絡因子を調整し、2群間の比較を行った。再発率に有意差(p<0.05)が認められた場合、患者の安全のために試験を中止できるように、中止の境界が設定された。解析にはSAS統計ソフトバージョン9.1(SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いた。
安全性 重篤な有害事象の発生は認めなかった。それ以外の安全性情報は論文中に記載はなかった。(安全性情報については最新の電子添文を参照ください)
Limitation 本研究ではビタミンや微量元素のような栄養状態については詳しく検討されておらず、また51例すべてで試験開始時のCDAIは150以下であった。
●検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。
グラフ:縦軸が累積再燃率(%)、横軸が期間(年)
Takagi S, et al., Aliment Pharmacol Ther 2006;24:1333-1340より作図

〈参考情報〉本邦の抗TNF-α抗体製剤と経腸栄養療法併用(メタ解析)

Fumihito Hirai, et al., J Gastroenterol 2020 Feb;55(2):133-141(COI:本試験は、EAファーマ株式会社の資金提供で実施された)
目的 ENと抗TNF-α抗体療法との併用が有用かどうかを検討するために行われた。
対象方法 2018年10月31日までに発表された論文を対象にPubMedでの文献検索を行った。その中で以下組み入れ基準を満たした文献を対象とした。
(1)抗TNF-α抗体が成人CD患者の維持療法(少なくとも16週間)として使用されていること
(2)ENを投与された患者と投与されなかった患者との間で比較されていること
(3)EN群と非EN群の両方について、イベント発生数が明確に記述されていること
評価項目 ENと抗TNF-α抗体療法との併用による寛解維持効果
統計解析 長期寛解(EN群/非EN群)のオッズ比の点推定値とその95%信頼区間を、各論文について、および全論文全体について求めた。長期寛解に関する全論文共通のオッズ比の統計モデルとして、文献効果を変数として考慮しないモデルである固定効果モデルと、文献効果を変数として考慮するモデルであるランダム効果モデルの2つを適用した。共通オッズ比の推定には、固定効果モデルにはMantel-Haenszel法を、ランダム効果モデルにはDerSimonian-Laird法を用いた。
安全性 本臨床研究はメタ解析のため安全性情報の確認ができなかった。(安全性情報については最新の電子添文を参照ください)
Limitation 対象患者の背景や再発の定義が異なっており、レビューされた研究の多くは後方視的コホート研究であった等。
表:長期寛解の割合、文 献、患者総数(割合)
長期寛解のオッズ比の点推定値 オッズ比(±95%信頼区間)
*:Test of heterogeneity(Breslow-Day test);p=0.250, Measure of heterogeneity;Ⅰ2=18.9%
Fumihito Hirai, et al., J Gastroenterol 2020 Feb;55(2):133-141より一部改変

6. 用法及び用量 通常、エレンタール®配合内用剤80gを300mLとなるような割合で常水又は微温湯に溶かし(1kcal/mL)、鼻腔ゾンデ、胃瘻、又は腸瘻から、十二指腸あるいは空腸内に1日24時間持続的に注入する(注入速度は75~100mL/時間)。また、要により本溶液を1回又は数回に分けて経口投与もできる。
標準量として成人1日480~640g(1,800~2,400kcal)を投与する。なお、年令、体重、症状により適宜増減する。
一般に、初期量は、1日量の約1/8(60~80g)を所定濃度の約1/2(0.5kcal/mL)で投与開始し、患者の状態により、徐々に濃度及び投与量を増加し、4~10日後に標準量に達するようにする。

令和5年度クローン病治療指針(内科)

(2024年3月改訂)
治療指針表:活動期の治療(軽症~中等症、中等症~重症、重症(病勢が重篤、高度な合併症を有する場合))
短腸症候群に対してテデュグルチドが承認された(適応等の詳細は電子添文参照のこと)
※(治療原則)内科治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し、必要に応じて専門家の意見を聞き、外科治療のタイミングなどを誤らないようにする。薬用量や治療の使い分け、小児や外科治療など詳細は本文を参照のこと。
*現在保険適用には含まれていない

小児クローン病治療フローチャート

(2024年3月改訂)
フローチャート:寛解導入療法、維持療法
(注1)治療開始後も、非侵襲的で腸管選択的なバイオマーカー(便中カルプロテクチン等)や、画像診断(上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査、小腸内視鏡検査、MR enterography、腸管エコー検査等)を活用して、治療効果を適切に判定することが重要である。
(注2)特に治療効果が不十分な場合は、時機を逸さないようにするためにも、小児クローン病の診療経験のある医師や施設に治療方針を相談することが望ましい。
(注3)どの段階でも外科治療の適応を十分に検討した上で内科治療を行う。なお肛門病変(g)・狭窄の治療、術後の再発予防の詳細については本文参照。
(注4)治療を開始する前に予防接種歴・感染罹患歴を確認し、定期・任意接種とも、積極的に行うことが望ましいが、詳細については本文参照。
a. 以下の予後不良予測因子を有する患者は、早期の抗TNF-α抗体製剤導入を検討する
Paris classification 追加のリスク因子 リスク層別化 推奨治療
B1 炎症型 なし 完全経腸栄養療法・ステロイド
B1 炎症型 寛解導入療法開始後12週時点で非寛解 抗TNF-α療法へのstep-up
B1+G1 炎症型 成長障害 完全経腸栄養療法
抗TNF-α療法導入(考慮)
B1+[L3+L4] 炎症型 広範病変(小腸+大腸)深い大腸潰瘍 抗TNF-α療法導入
B1+p 炎症型 肛門病変(g) 抗TNF-α療法導入+抗菌薬・外科治療
B2 狭窄型 なし 抗TNF-α療法導入
B2 狭窄型 狭窄前拡張あり 閉塞症状・閉塞徴候あり 腸管切除術+術後抗TNF-α療法
B3 穿通型 腸管穿孔・内瘻・炎症性腫瘤・膿瘍形成 外科治療+術後抗TNF-α療法
*B1:炎症型、B2:狭窄型、B3:穿通型、G1:成長障害あり、p:肛門病変あり、
 L1:小腸型、L2:大腸型、L3:小腸大腸型、L4:上部消化管病変(L4a)および回腸末端1/3よりも口側の小腸病変(L4b)
b. 重篤な場合とは下記1~5のいずれかの場合である
 1. 頻回(6回/日以上)の激しい下痢、下血、腹痛を伴い経腸栄養が困難
 2. 消化管出血が持続
 3. 38℃以上の高熱、腸管外症状(関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、口内炎など)により衰弱が強く、安静の上全身管理を要する
 4. 著しい栄養障害がある
 5. PCDAIが70(又はCDAIが450)以上
c. 5-ASA製剤は、軽症例の寛解導入・寛解維持薬として選択されるが、クローン病に対する有効性を示す根拠はない
d. 経口ブデソニド(ブデソニド腸溶性顆粒充填カプセル)は、完全経腸栄養療法が困難な回盲部病変に対して使われることがある
e. ウステキヌマブ・リサンキズマブ・べドリズマブ・ウパダシチニブは、小児に対する保険適用はなく、インフリキシマブ・アダリムマブの不応例・不耐例に対して使用を検討する
f. チオプリン製剤の安全性について、患者・家族に十分説明した上で使用されるべきである
g. 肛門病変、瘻孔にメトロニダゾールやシプロフロキサシンの併用が有用な場合がある

各薬剤の使用にあたっては、電子添文を確認してください。

エレンタール®の歴史

もともと米国航空宇宙局(NASA)が少量で完全な栄養補給と糞便量を少なくするための低残渣な宇宙食を開発するために研究が開始
1968:米国Morton Norwich社から「Vivonex®」という製品が発売 特に外科領域の術前術後の栄養管理において注目、1981:国内初の成分栄養剤としてエレンタール®が承認、1998:厚生労働省 難治性炎症性腸管障害調査研究班の治療指針(平成9年度)でクローン病治療のプライマリーセラピーとして認められる、2005:本剤の味を改良、2006:フレーバーを改良、2018:経腸栄養剤で初の基礎的医薬品となる

エレンタール®の特徴

成分栄養剤はほとんど消化を必要としない成分で構成された低残渣性・易吸収性の経腸的高カロリー栄養剤
  • 窒素源はアミノ酸で構成され、消化の必要はなく、易吸収性です。1)
  • 脂質は、必要最小限しか含まれていません。1)2)
  • 低残渣で糞便量が減少しました(ラット)。3)
  • 5Fr.チューブにおいても流動性が認められました。4)
  • 副作用発現率は28.6%(2,339件/8,170例)、主な副作用は下痢12.94%、腹部膨満感4.39%、血中AST(GOT)・ALT(GPT)・Al-P上昇3.68%、悪心2.06%、嘔吐1.64%、腹痛1.51%等でした。(再審査終了時)また、重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー(頻度不明)、低血糖(0.1%未満)が報告されました。5)
1) 中辻博尊 他:薬理と治療, 1979;7(11), 103-111(著者は味の素株式会社の社員である。)
2) 静脈経腸栄養年鑑 2017-18 p.92-93
3) 中辻博尊 他:薬理と治療, 1979;7(11), 11-22(著者は味の素株式会社の社員である。)
4) EAファーマ株式会社社内資料(エレンタール®流動性試験)
5) エレンタール®配合内用剤 インタビューフォーム 2024年1月改訂(第9版)

2025年6月作成

エレンタール®は基礎的医薬品として患者様を栄養面からサポートします

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クローン病における栄養療法の位置づけ

【監修】医療法人 弘仁会 てんのうじ消化器・IBDクリニック 鎌田 紀子 先生

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IBDの栄養療法~成分栄養療法の役割と位置づけ~

EAファーマ株式会社 統合マーケティング本部 製品戦略部 IBD戦略グループエレンタール®プロダクトマネージャー 松本 祐典

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