MASLD患者における血清アルブミン値と長期予後との関連1)

*Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患
1)Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023
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【監修】大阪公立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 准教授 藤井 英樹 先生
はじめに
MASLD患者における肝生検時の蛋白・アミノ酸代謝異常と長期予後との関連は、未だ明らかではありません。
我々は、肝生検によりMASLDと確定診断されたアジア人患者の臨床転帰の調査を目的に実施した多施設共同コホート研究(Clinical Outcome Nonalcoholic FattyLiver Disease、CLIONE試験2))の結果に基づき、日本人患者1,383例を対象としたサブ解析を実施しました1)
1)Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023
2)Fujii H, et al.: Clin Gastroenterol Hepatol 21(2): 370-379, 2023

試験概要

目的 肝生検時の血清アルブミン値がMASLD患者の長期予後を予測できるか否かについて検討すること。
対象・方法 当研究は、CLIONE試験のサブ解析として行われたものである。
1994年12月1日~2020年12月31日までの期間において、肝生検によりMASLDと診断された日本人患者1,383例(平均年齢54.6歳)を対象とし、2021年3月31日までフォローアップした。フォローアップ期間は、肝生検時から最終来院時、死亡、OLT(同所性肝移植)時までとした。MASLD診断後、患者は3~12ヵ月の間隔をあけて来院もしくは転科し、その都度、臨床的アウトカムの発生有無を確認した。
肝生検時の血清アルブミン値により、患者を高値群(>4.0g/dL n=1,060)、中程度値群(3.5-4.0g/dL n=295 )、低値群(<3.5g/dLn=28)の3群に分け、診断時から5年後、10年後、15年後の死亡、OLT、肝関連死、肝関連イベント(肝細胞癌、非代償性肝硬変、胃食道静脈瘤/出血)の発生率を算出した。
また、臨床的に重要な転帰について、潜在的な危険因子の影響を調整しつつ追跡期間を考慮するため、Cox比例ハザード回帰分析を用いて単変量(未調整)および多変量(調整済み)ハザード比(HR)(相対リスク)を算出した。なお、当研究では以下の3つのハザードモデルを作成した。
モデル1には、調整因子として、血清アルブミン値、年齢(65歳以上と65歳未満に二値化)、性別(男性または女性)が含まれた。モデル2にはモデル1の調整因子に加え、NASH(非アルコール性脂肪肝炎 FLIPアルゴリズムに基づく)および線維化段階が含まれた。モデル3にはモデル1の調整因子に加え、糖尿病およびBMI(25kg/m²以上と25kg/m²未満に二値化)が含まれた。
Limitation 内視鏡による追跡評価や非肝硬変患者の画像診断結果の欠如により、肝関連イベント数が過小評価された可能性がある。等
Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023

結果

MASLD患者における線維化の進行と血清アルブミン値の変化

FIB-4 indexによる線維化の進行段階と血清アルブミン値の関係を下に示す。線維化の進行段階F0、F1、F2、F3、F4における血清アルブミンの中央値はそれぞれ4.5、4.4、4.3、4.2、3.8g/dLであった。線維化の進行段階と血清アルブミン値の関係を分析したところ、肝線維化ステージがF0からF4に進行するにつれて血清アルブミン値は有意に低下する傾向を示した(p<0.001、Kruskal–Wallis検定)
肝生検時における、線維化の進行度と血清アルブミン値の関係
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Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023

血清アルブミン値と予後(死亡、OLT)との関係

血清アルブミン値で層別化後の、死亡およびOLT発生率に関するKaplan-Meyer曲線を下に示す。死亡またはOLTの発生率は、血清アルブミン値分類(高値、中程度値、低値)によって有意に異なることが示された(p<0.001、Log-rank検定)。
死亡・OLTに対する無病生存率
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Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023

血清アルブミン値と主な臨床転帰との関係

主な臨床転帰に関する未調整ハザードリスクを下に示す。中程度値群では高値群と比較して、死亡またはOLT(3.6)、肝関連死(11.2)、肝細胞癌(4.6)、非代償性肝硬変(8.2)、胃食道静脈瘤(6.2)のハザードリスクが高かった。低値群では高値群と比較して、死亡またはOLT(20.9)、肝関連死(83.6)、肝細胞癌(4.2)、非代償性肝硬変(45.4)、胃食道静脈瘤(38.4)のハザードリスクが高かった。
主な臨床転帰に関する未調整ハザードリスクのヒートマップ
Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023
多変量解析結果を下に示す。ベースライン時の血清アルブミン値の低下は、モデル1、モデル2、モデル3いずれにおいても、死亡またはOLTと関連がみられた。
また、ベースライン時の血清アルブミン値の低下は、モデル1において肝臓関連死亡とも関連していた。
モデル1には、調整因子として、血清アルブミン値、年齢(65歳以上と65歳未満に二値化)、性別(男性または女性)が含まれた。モデル2にはモデル1の調整因子に加え、NASH(FLIPアルゴリズムに基づく)および線維化段階が含まれた。モデル3にはモデル1の調整因子に加え、糖尿病およびBMI(25kg/m²以上と25kg/m²未満に二値化)が含まれた。
死亡またはOLT、および肝関連死に対する多変量調整ハザード比
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Takahashi H, et al.: Nutrients 15(9): 2014-2025, 2023

監修者コメント

MASLD患者の血清アルブミン値は線維化ステージ1~3では維持され、ステージ4、即ち肝硬変で低下が開始すると考えられました。血清アルブミン値が中程度値(3.5~4.0g/dL)または低値(<3.5g/dL)の患者は、高値(>4.0g/dL)の患者と比較して、死亡またはOLTのリスクが有意に高いことが示されました。
これらの結果から、MASLD患者においては、血清アルブミン値が3.5g/dL以下のみならず、それ以上(~4.0g/dL)の患者においても蛋白代謝異常が発生し、アミノ酸インバランスの是正が必要である可能性が示唆されました。低アルブミン血症(血清アルブミン値≦3.5g/dL)の肝硬変患者においては、早期の血清アルブミン値の改善が重要と考えられます。

●「禁忌を含む注意事項等情報」等はDI頁をご参照ください。

リーバクト®の臨床成績[国内第Ⅲ相比較試験]

武藤 泰敏 他: JJPEN 11(9): 1137-1154, 1989
【COI】本研究は、リーバクト®配合顆粒の開発会社である味の素株式会社(現:EAファーマ株式会社)の支援にて行われた。
目的 低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者を対象に、血清アルブミン値の変動を主たる評価項目として、プラセボとの二重盲検比較試験を実施する。
対象 非代償性肝硬変で低アルブミン血症を有する患者(血清アルブミン値3.5g/dL以下、ただし血漿アルブミン製剤非投与時)
リーバクト®配合顆粒群:98例、プラセボ群:95例
※リーバクト®配合顆粒の1/10量の分岐鎖アミノ酸を含有
期間 観察期間:2週間、投与期間:12週間
方法 リーバクト®配合顆粒またはプラセボを1日3回(リーバクト®配合顆粒:分岐鎖アミノ酸として12g/日、プラセボ:分岐鎖アミノ酸として1.2g/日)、食後に経口投与する。
評価項目 リーバクト®配合顆粒を12週間投与した患者における血清アルブミン値の推移(検証的解析項目)、副作用発生状況、その他
解析計画 血清アルブミン値について、リーバクト®配合顆粒またはプラセボのそれぞれ投与前値と投与後の値を、t検定を用いて比較検討し、有意水準は5%以下とした。

リーバクト®配合顆粒を12週間投与した患者における血清アルブミン値の推移(検証的解析結果)

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*有意差あり, Mean±SD, t検定
武藤 泰敏 他: JJPEN 11(9): 1137-1154, 1989より作図

安全性

国内第Ⅲ相比較試験における副作用発生状況は以下の通りである。

【リーバクト®配合顆粒群】

副作用発現率は5.1%(5/98例、7件)で、腹満感2件、下痢2件、口渇・食欲不振・腹部不快感 各1件であった。死亡例を含む重篤な副作用はみられなかった。投与中止に至った副作用は1例(2件:食欲不振、腹満感)で、投与を中止することで症状は消失した。

【プラセボ群】

副作用発現率は3.2%(3/95例、7件)で、腹痛3件、下痢2件、嘔気・悪心各1件であった。死亡例を含む重篤な副作用はみられなかった。
投与中止に至った副作用は2例(5件:腹痛2件、下痢・嘔気・悪心各1件)で、投与を中止することで症状は消失した。

2026年6月作成

肝疾患の栄養療法

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