前処置後の大腸内視鏡検査時の気泡に関与する相関因子の検討

【監修】公益財団法人田附興風会医学研究所北野病院消化器内科副部長 吉川 貴章 先生
大腸内視鏡検査の前処置による大腸内の気泡の状態は、大腸内視鏡検査の質に影響を与える要因となるが、気泡の重症度についての相関因子は明らかにされていない。そこで我々は、気泡の重症度に影響を及ぼす相関因子を明らかにすることを目的とした研究を行った。
その結果、前処置完了から検査までの間隔時間、及び胆嚢切除術歴が気泡の重症度に影響を与える因子であることが同定された(Yoshikawa T, et al.: J Digest Endosc 2024; 15: 18-26)

試験概要

目的 気泡の重症度に影響を及ぼす相関因子を明らかにすること。
対象・方法 医学研究所北野病院にて、2022年8~9月までの間に内視鏡検査を受けた外来患者314例を解析対象とした。気泡はCEBuS(Colon Endoscopic Bubble Scale)を用いてスコアリングし、CEBuSスコアに関連する臨床要因を後ろ向きに解析した。
診療録より、年齢、性別、ASA-PS(American Society of Anesthesiologists physical status)、BMI、ECOG-PS(Eastern Cooperative Oncology Group-Performance Status)、併存疾患、処方薬、結腸切除・胆嚢切除を含む腹部手術歴、腹部放射線療法歴を収集した。また、内視鏡記録から盲腸または吻合部の挿管、憩室症、ポリープの検出、有害事象を、内視鏡画像記録からCEBuS、BBPS、大腸内視鏡挿入時間、抜去時間、大腸内視鏡検査までの間隔時間を得た。なお、大腸内視鏡の間隔時間は、前処置完了から内視鏡が盲腸または吻合部に到達するまでの時間とした。
前処置:
被験者には、大腸内視鏡検査の3、2日前から低残渣の食事を摂取させ、大腸内視鏡検査用の食事の摂取を検査前日の夕食まで許可した。夕食後、20時に0.75%ピコスルファートナトリウム水和物10mL、センノシドA/Bカルシウム24mgを服用させた。検査当日7時よりポリエチレングリコール(PEG)製剤2000mLの服用を開始させ、午後より大腸内視鏡検査を実施した。被験者には、事前に渡した説明用パンフレットに従って便を1~5点で評価させ、点数と時間を記録させた。5点を前処置完了とし、検査時間までに5点に達しない場合は検査を延期し再度PEG製剤を服用させた。大腸内視鏡前処置は、BBPS(Boston Bowel Preparation Scale)を用いてスコアリングした。各グレードの評価は以下の通りである。

BBPS-0:固形便が排出されずに粘膜が見えない未準備の結腸セグメント
BBPS-1:結腸粘膜の一部が見えるが、結腸粘膜以外の部分は染色、残便、不透明な液体により、よく見えない
BBPS-2:少量の残留染色、便の小片、不透明な液体があるが、結腸の粘膜はよく見える
BBPS-3:残存染色、小さな便片、不透明な液体はなく、結腸の粘膜全体がよく見える

回盲部または吻合部、横行結腸または脾弯曲部、直腸のBBPSを、大腸内視鏡を抜去する際の映像からスコア化した。
CEBuS:
大腸内視鏡前処置に伴う大腸内の気泡は、CEBuS(Colon Endoscopic Bubble Scale)を用いてスコアリングした。各グレードの定義は以下の通りである。

CEBuS-0:粘膜の可視性を妨げない、表面の5%未満を覆う気泡がないか最小限
CEBuS-1:表面の5~50%を覆う中程度の数の気泡があり、粘膜の視認性に影響を与え、除去にさらに時間を要する
CEBuS-2:表面の50%以上を覆う重度の気泡があり、粘膜の視認性を妨げ、除去にさらに時間を要する

回盲部または吻合部、横行結腸または脾弯曲部、直腸のCEBuSを、大腸内視鏡挿入時の映像からスコア化した。なお、大腸は長い臓器であり、気泡の状況をトータルで表現するのは難しいことから、回盲部や吻合部のCEBuSに着目し、その相関因子の解明を試みた。
解析方法 連続変数またはカテゴリー化された説明変数と連続目的変数との関連の予測に、単回帰分析および重回帰分析を用いた。多変量解析には、説明変数として、年齢、性別、ASA-PS、ECOG-PS、MRI、併存疾患、大腸切除・胆嚢摘出などの手術歴、放射線照射歴、憩室症、投薬歴、大腸内視鏡検査の時間間隔(分)を含めた。
Limitation 後ろ向き単施設の研究であること、前処置中の便の評価は被験者が行っておりパンフレットのスコアが「5点」になる時間には客観的な信頼性がないこと、腸管洗浄剤にはPEG製剤のみを使用しジメチコンは使用しなかったこと、CEBuSスコアとPEG製剤の摂取速度との関連は調査できなかったことなどがlimitationとしてあげられる。

●各薬剤の使用にあたっては、電子添文をご確認ください。

結果

被験者背景

被験者の年齢中央値[範囲]は65歳[18-88]、男性179例(57.0%)、女性135例(43.0%)、187例(59.6%)に合併症が認められ、内視鏡検査以前に結腸切除、胆嚢切除を含む腹部手術歴のある被験者は87例(27.7%)であった。

大腸内視鏡検査の質

前処置の適合率(回盲部または吻合部、横行結腸または脾弯曲部、直腸のBBPSの合計>6)は99.7%、盲腸・吻合部到達率は99.6%、抜去時間の中央値[範囲]は13分[5-60]、99.4%が6分以上、89.4%が9分以上であった。ポリープ検出率(PDR)は52.9%であった。

大腸内気泡の評価

大腸内視鏡検査までの間隔時間の中央値[範囲]は237分[30-456]であった。CEBuS 2は、直腸の6.7%、横行結腸または脾弯曲部の23.9%、回盲部または吻合部の39.8%に認められた。

回盲部または吻合部の気泡の相関因子

CEBuSスコアを順位変数として、線形回帰分析を行った。単回帰分析の結果、大腸内視鏡検査の間隔時間はCEBuSスコアと有意な相関を示した(p=0.0004)(下図)。また、重回帰分析の結果、大腸内視鏡検査の間隔時間と胆嚢切除歴は、CEBuSスコアと有意な相関を示した(大腸内視鏡検査の間隔時間=0.0016、胆嚢切除の既往歴 p=0.0198)(下表)。
■前処置完了時間から大腸内視鏡が盲腸または吻合部に到達するまでの時閻と、CEBuSスコアとの単回帰分析
*パンフレットに記裁された前処四完了を示す「5点」が得られた時間
前処置完了時間から大腸内視鏡が盲腸または吻合部に到達するまでの時閻と、CEBuSスコアとの単回帰分析を示す図
Yoshikawa T, et al.: J Digest Endosc 2024; 15: 18-26
■多変量線形回帰分析の結果
多変量線形回帰分析の結果を示す表
多変置線形回帰分析
Yoshikawa T, et al.: J Digest Endosc 2024; 15: 18-26

監修者コメント

質の高い大腸内視鏡検査のためには十分な前処置が必要であるが、前処置によって生じる大腸内の気泡は視認性の障害となり、病変の見落とし、内視鏡医の疲労、フラッシングの危険性を増大させる。
当研究では、大腸内視鏡検査中における大腸内の気泡の重症度に影響を与える因子を、臨床的、手技的、時間的、薬物的観点から検討した結果、前処置完了から大腸内視鏡検査までの間隔時間、胆嚢切除歴が相関因子として同定された。
大腸内視鏡検査実施においては、十分な前処置とともに、前処置完了から検査まで長時間待機させないようにすることが重要であると考える。

2025年10月作成

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