肝疾患における代謝異常と栄養介入

【監修】三重大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授 中川 勇人 先生
はじめに
非代償性肝硬変の治療では、肝細胞癌を含め、患者の肝予備能をいかに高められるかが鍵となります。すべての肝硬変診療において、栄養療法は基本である1)とされ、肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版)では第3章「治療」項で栄養療法が筆頭に記載されています2)。分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acids:以下、BCAA)は栄養療法において重要な役割を有し、肝疾患の進展に伴い減少することが知られています。理由として、①肝硬変では肝細胞機能低下や門脈大循環シャントにより血中アンモニアが増加する、②筋肉ではBCAAを利用しグルタミンを合成することでアンモニアを代謝する、③その結果、筋肉でのBCAA消費が亢進、が挙げられます3)。
1)朝比奈靖浩:肝臓クリニカルアップデート 医学図書出版 6(2) p135, 2020
2)日本消化器病学会、日本肝臓学会編 肝硬変診療ガイドライン2020(改訂第3版) p.ⅹⅶ, 2020, 南江堂
3)Moriwaki H, et al.:BBRC, 313, 405-409, 2004

Branched-Chain Amino Acid(BCAA:分岐鎖アミノ酸)とは

監修:中川 勇人 先生(三重大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授)
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  • 骨格が一部分岐した分子構造をもつアミノ酸であり、バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類を指す
  • 体内で合成できない必須アミノ酸であり、食事等から摂取する必要がある
  • 筋肉中の蛋白質に含まれる必須アミノ酸のうち約40%を占め、運動時に重要な役割を果たす
  • 肝硬変ではBCAAが減少し、Fischer比(BCAA/AAA*比)が低下する
*Aromatic Amino Acid(芳香族アミノ酸):チロシン、フェニルアラニン

肝硬変でBCAAが減少する理由

監修:中川 勇人 先生(三重大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授)
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監修者コメント

低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者では、血清アルブミン値を高値に維持し、肝予備能を高めることが重要です。

●「禁忌を含む注意事項等情報」等はDI頁をご参照ください。

リーバクト®の臨床成績[国内第Ⅲ相比較試験]4)

4)武藤 泰敏 他:JJPEN 11(9):1137-1154, 1989 [COI]本研究は、リーバクト®配合顆粒の開発会社である味の素株式会社(現:EAファーマ株式会社)の支援にて行われた。

リーバクト®配合顆粒を12週間投与した患者における血清アルブミン値の推移(検証的解析結果)

*有意差あり Mean+SD, t検定
武藤 泰敏 他:JJPEN 11(9):1137-1154, 1989より作図
目的 低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者を対象に、血清アルブミン値の変動を主たる評価項目として、プラセボとの二重盲検比較試験を実施する。
対象 非代償性肝硬変で低アルブミン血症を有する患者(血清アルブミン値3.5g/dL以下、ただし血漿アルブミン製剤非投与時)
リーバクト®配合顆粒群:98例、プラセボ※群:95例
※リーバクト®配合顆粒の1/10量の分岐鎖アミノ酸を含有
期間 観察期間:2週間、投与期間:12週間
方法 リーバクト®配合顆粒またはプラセボを1日3回(リーバクト®配合顆粒:分岐鎖アミノ酸として12g/日、プラセボ:分岐鎖アミノ酸として1.2g/日)、食後に経口投与する。
評価項目 リーバクト®配合顆粒を12週間投与した患者における血清アルブミン値の推移(検証的解析項目)、副作用発生状況、その他
解析計画 血清アルブミン濃度について、リーバクト®配合顆粒またはプラセボのそれぞれ投与前値と投与後の値を、t検定を用いて比較検討し、有意水準は5%以下とした。

安全性

国内第Ⅲ相比較試験における副作用発生状況は以下の通りである。

【リーバクト®配合顆粒群】

副作用発現率は5.1%(5/98例、7件)で、腹満感2件、下痢2件、口渇・食欲不振・腹部不快感各1件であった。死亡例を含む重篤な副作用はみられなかった。投与中止に至った副作用は1例(2件:食欲不振、腹満感)で、投与を中止することで症状は消失した。

【プラセボ群】

副作用発現率は3.2%(3/95例、3件)で、腹痛3件、下痢2件、嘔気・悪心各1件であった。死亡例を含む重篤な副作用はみられなかった。投与中止に至った副作用は2例(5件:腹痛2件、下痢・嘔気・悪心各1件)で、投与を中止することで症状は消失した。

肝硬変患者の生命予後に対する分岐鎖アミノ酸の影響5)[参考情報]

5)Kawaguchi T et al.:Clinical Gastroenterology and Hepatology 12(6) p1012-1018, 2014
目的 BCAA補充療法が、肝硬変患者の肝細胞癌発症と生命予後におよぼす影響を検討する。
試験デザイン 多施設前向き比較試験(国内14施設※)
※症例登録施設:久留米大学、東海大学、大阪厚生年金病院(現 JCHO大阪病院)、獨協医科大学越谷病院(現 獨協医科大学埼玉医療センター)、関西医科大学附属滝井病院(現 関西医科大学総合医療センター)、旭川医科大学、三重大学、愛媛大学、岩手医科大学、杏林大学、岐阜大学、大阪市立大学(現 大阪公立大学)、国立病院機構別府医療センター、MIWA内科胃腸科CLINIC(現 MIWA内科胃腸内科・内視鏡CLINIC) (論文記載順)
対象 肝細胞癌未発症の肝硬変患者299名
方法 観察期中止脱落症例(32名)を除いた267名を解析対象とし、BCAA顆粒製剤または肝不全用栄養剤(BCAAとして、5.5~12.0g/day )を2年以上服薬した患者をBCAA投与群(85例)、上記薬剤の適応がない、もしくは2年以上服薬されなかった患者をBCAA非投与群(182例)とした。
評価項目 主要評価項目:肝細胞癌発症もしくは死亡(死因は不問)
解析方法 BCAA投与群と非投与群間の累積肝細胞癌発症率および累積死亡率を競合リスク解析(Fine and Gray解析)にて比較検討した。
Limitation 試験期間中に発生したイベントが少なかったことから、死亡例におけるBCAA補充療法が与えた影響については依然として不明である。当研究は無作為化比較試験ではなかったため、結果については、より多くのイベント発症を伴う無作為化比較試験で検証する必要がある。
●検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

結果

累積イベント発症率の推移(Fine and Gray解析)[参考情報]

累積肝細胞癌発症率はBCAA投与群が非投与群に比して有意に低く(相対リスク0.45, p=0.019, 名目上のp値, Fine and Gray解析)、累積死亡率もBCAA投与群が非投与群に比して有意に低率であった(相対リスク0.009, p=0.015, 名目上のp値, Fine and Gray解析)。
Kawaguchi T et al.:Clinical Gastroenterology and Hepatology 12(6) p1012-1018, 2014

安全性

BCAA顆粒製剤または肝不全用栄養剤の投与により胃腸障害や下痢などの副作用が見られ、投与を中止した。これらの患者はBCAA顆粒製剤または肝不全用栄養剤の服用困難例(n=30)の一部として、BCAA非投与群に含めた。試験期間中に、BCAA非投与群で16例、BCAA投与群で2例が死亡した。BCAA投与群の2例の死因の内訳は、慢性肝不全1例、心血管疾患1例であった。その他の副作用の詳細については論文中に記載がなかった。

●リーバクト®配合顆粒の安全性については、DI頁の安全性情報をご参照ください。

監修者コメント

低アルブミン血症を呈する非代償性肝硬変患者に対しては、BCAAの補給によりアミノ酸インバランスを是正し、肝予備能を維持することが重要と考えます。

2026年10月作成

肝疾患の栄養療法

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