大腸がんの「いま」と「これから」を知る

【監修】国立がん研究センター中央病院/がん対策研究所 関口 正宇 先生

大腸がんの疫学

 
関口先生、日本人はがんの中でも「大腸がん」になる人が多いって聞いたのですが、そもそも「大腸がん」ってどんな病気なのですか?
 
大腸がんは「大腸の内側の粘膜にできた悪性の腫瘍」のことです1)。腫瘍とは細胞が増えすぎてかたまりになったもののことで、それが悪性、つまり、体にとってよくない働きをする場合に「がん」と言います。
2019年のデータでは、日本国内で15万人以上の方が大腸がんと診断されていて、これはがん全体の中で最も罹患率が高いです2)3)。生涯で大腸がんと診断される割合は、男性で約10人に1人、女性で約12人に1人と言われていますね4)
生涯で大腸がんと診断される割合
大腸がんと診断される割合を示す図

4)国立がん研究センターがん情報サービス. 「最新がん統計」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html(2025年7月15日アクセス)より作図

 
そんなに多くの人が大腸がんだと診断されているのですね。
がんは高齢者がかかる病気のイメージがありますが、大腸がんも年齢による違いはありますか?
 
ゾウさんの言うとおり、大腸がんも加齢に伴って罹患率が高まっていく病気です。男女ともに30歳代から徐々に罹患率が増え始めて、特に50歳代~80歳代前半にかけて急激に増加することがわかっています2)。ただし、50歳未満の若年世代でも大腸がんの罹患数が日本を含めて世界的に増えていることが知られています。そのため、日本の大腸がん検診において推奨されているように、40代においても検診を受けることは大切なのです5)
大腸がんの年齢階級別罹患率(2019年全国がん登録)
大腸がんの年齢階級別罹患率を示すグラフ

2)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(全国がん登録)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2(2025年7月15日アクセス)
3)厚生労働省. 「全国がん登録」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450173&tstat=000001133323(2025年7月15日アクセス)
より作図

目的:全国がん登録は、がん医療の質の向上、がんの予防の推進、情報提供の充実およびその他のがん対策を科学的知見に基づき実施するため、がんの罹患、治療、転帰等の状況を把握し、分析すること
方法:病院等の管理者は、届出対象となっているがんの診断又は治療をした場合に届出票を作成し、都道府県知事を介して厚生労働大臣に提出する。市区町村長は、死亡の届書(死亡届及び死亡診断書等)に基づいて死亡者情報票を作成し、都道府県知事を介して厚生労働大臣に提出する。厚生労働大臣は、提出された情報について照合等を行いデータベースに記録する。

 
大腸がんの罹患率は年齢と大きく関係しているのですね。私は40歳を過ぎた頃から検査を受けるようにしています。
 
良いことですね。大腸がんは早期発見できると予後が良好なので、早期発見のために検診や検査を受けることはとても大事ですね。
これまで罹患率のデータを見てきたので、次は大腸がんによる死亡率に関するデータも見てみましょう。
2022年のデータによると大腸がんによる死亡数は年間5万人を超えていて、がん全体の中では、男性では2番目、女性では1番多いです6)7)
がん死亡の部位ごとの内訳(2022年人口動態統計)
がん死亡の部位ごとの内訳を示すグラフ

6)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(厚生労働省人口動態統計)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1(2025年7月15日アクセス)
7)厚生労働省. 「人口動態統計」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897(2025年7月15日アクセス)
より作図

目的:我が国の人口動態事象を把握すること。
方法:戸籍法及び死産の届出に関する規程により届け出られた出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数を対象として、毎月実施される。

 
そして、罹患率と同じように、死亡率も加齢に伴って増加していくことがわかっています。

大腸がんの年齢階級別死亡率(2022年人口動態統計)

大腸がんの年齢階級別死亡率を示すグラフ

6)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(厚生労働省人口動態統計)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1(2025年7月15日アクセス)
7)厚生労働省. 「人口動態統計」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897(2025年7月15日アクセス)
より作図

目的:我が国の人口動態事象を把握すること。
方法:戸籍法及び死産の届出に関する規程により届け出られた出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数を対象として、毎月実施される。

 
大腸がんは罹患率も死亡率も年齢が関係していることがよくわかりました。続いて、大腸がんの罹患数や死亡数の推移についてはいかがでしょうか?
 
1975年から2019年までのデータを見てみると、大腸がんは罹患数・死亡数のどちらも、人口の高齢化を背景に増え続けています2)3)6)7)8)
大腸がんの罹患数・死亡数の推移(男女計)
大腸がんの罹患数・死亡数の推移を示すグラフ

2)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(全国がん登録)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2(2025年7月15日アクセス)
3)厚生労働省. 「全国がん登録」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450173&tstat=000001133323(2025年7月15日アクセス)
6)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(厚生労働省人口動態統計)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1(2025年7月15日アクセス)
7)厚生労働省. 「人口動態統計」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897(2025年7月15日アクセス)
8)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2(2025年7月15日アクセス)
より作図

 
そして、国立研究開発法人国立がん研究センターが発表している将来推計によると、残念ながら大腸がんの罹患数・死亡数のどちらも、2035年までは増加し続けると予想されているのです9)
大腸がん罹患数・死亡数の将来予測
大腸がん罹患数・死亡数の将来予測を示すグラフ

9)国立がん研究センターがん情報サービス. 「集計表ダウンロード(4.将来推計)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor4(2025年7月15日アクセス)
より作図

目的:新規がん症例/死亡数を2054年まで予測し、がん症例/死亡数の変化を分解して、人口動態の変化ががん負担に及ぼす影響を評価すること。
方法:2019年までのがん症例/死亡に関するデータを収集し、複数の統計モデルの予測性能を実証的に検証し、時系列交差検証を適用して最適モデルを選択した。

 
大腸がんはこれからも増え続ける疾患なのですね。大腸がんにならないためにできることがあれば知りたいです。
 
とても良いことですね!では、次回は大腸がんのリスクと予防法について見ていきましょう。

まとめ

大腸がんはがん全体の中で最も罹患率の高いがんです。死亡数(2022年人口動態統計)も全がんの中で肺がんに次いで2番目に多く、今後も増え続けると予想されています9)

1)大腸癌研究会編. 大腸癌取扱い規約第9版.金原出版.2018年.
2)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(全国がん登録)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2(2025年7月15日アクセス)
3)厚生労働省. 「全国がん登録」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450173&tstat=000001133323(2025年7月15日アクセス)
4)国立がん研究センターがん情報サービス. 「最新がん統計」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html(2025年7月15日アクセス)
5)Sung JJY, et al. Am J Gastroenterol. 2019 Feb;114(2):322-329.
6)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(厚生労働省人口動態統計)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor1(2025年7月15日アクセス)
7)厚生労働省. 「人口動態統計」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&toukei=00450011&tstat=000001028897(2025年7月15日アクセス)
8)国立がん研究センターがん情報サービス. 「がん統計(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor2(2025年7月15日アクセス)
9)国立がん研究センターがん情報サービス. 「集計表ダウンロード(4.将来推計)」.
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html#anchor4(2025年7月15日アクセス)

2025年9月作成

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