ポイント
毎日の食事摂取量と排便回数・排便量を照らし合わせて栄養管理を実施しました。これには、排便日誌が活用されました。
7日間以上の食事摂取不良や栄養状態低下の患者さんを早期に把握し、食事摂取の促しや、栄養補助食品の提供を行いました。
食事以外での水分摂取量の把握は困難ですが、看護スタッフと協働して情報収集しました。得られた情報から水分摂取量を算出し、生化学・血液検査データや尿回数をアセスメントし、脱水や多飲のリスクを評価します。
脱水症状やブリストルスケール※1・2(第2回「排泄ケアの基本」Chapter2の動画をご参照ください。)の患者さんには、看護スタッフと一緒に飲水を促したり、主治医へ点滴を提案したり。多飲やブリストルスケール※6・7の患者さんには、体重測定やコップの管理など水分制限を行いました。
栄養士 西森さん
「改革以前は、管理栄養士からは排泄に関わる食事対応や栄養指導について“提案する”ことが中心でした。
コンチネンスケアチームとなってからは、多職種でアセスメントし、対応方法を考え、選び、実施するという関わり方に変わりました。栄養指導や食事対応をする件数はかなり増え、患者さんの意識が高まったという手応えを感じることができました。」
薬剤師 西田さん
「コンチネンスケアの活動以前は、入院時から定期処方、頓服で下剤を服用していた結果、医療者も患者さん自身も下剤に頼ってしまい、下剤を連用する傾向にありました。
チームに参加した当初は何をしていいのか悩んでいましたが、スタッフと情報を交わしていく中で、処方箋からでは分からない排泄ケアの実態が見えてきました。病棟スタッフとの双方向のやり取りから、薬剤変更や整腸剤の導入などを提案する機会も増えました。患者さんのQOLの向上に排泄がいかに重要かということ、そして、排便コントロールをすることで精神的にもサポートできることに気づかされました。」
管理栄養士 川﨑麻由さん
川﨑さんは、栄養士として患者さんの状況に合わせた適正な食事の内容を検討し、提供しています。食事状況を実際に確認し、患者さんご本人からも聞き取りを行います。
川﨑「食事内容を検討する時は、カルテの排便状態や、食事の摂取状況、患者さんご本人の声から検討しています。また、退院後も自宅で続けられるように栄養指導を行っています。面談などで気になることがあれば、その都度スタッフにフィードバックをしています。」
薬剤師 田上浩子さん
田上さんの活動は、毎朝のカンファレンスで名前の上がった患者さんの問題と薬剤との関係を総合的に判断することから、患者さんの状況に合わせた剤形変更の提案や、薬剤変更の提案、薬剤の情報提供までに至ります。
田上さんが判断材料を得る大きなソースもまた患者さん自身です。病棟に足を運び、自分の目で患者さんの状況を確認します。
田上「気になる患者さんがいる時は病棟や作業療法室まで会いにいくことがあります。カンファレンスやカルテでは拾えない患者さんの状況を把握することができるからです。動作の緩慢の度合い、震えの度合い、便秘の度合いなど、カルテでは読み取れないことがわかり、薬剤の調整の提案につなげています。
病棟へ通うことで、患者さんに薬剤師として覚えてもらうことで、患者さんの方から薬について質問をしてくれることがよくあります。『薬を変えてから便秘になったのは副作用なのか』といった便秘に悩むような声があれば、排便の状況を聞き取り、看護師と状況をすり合わせて、フィードバックすることがあります。」
近森病院総合心療センターの医療は、多職種がそれぞれの視点で患者さんを見て、それぞれが判断して直接患者さんに介入する自立・自動するチーム医療です。それによって専門性が高く、効率的で質の高いチーム医療の実践へとつながっています。
2025年3月
12分29秒
フローチャート2
成功した体験はモチベーションの維持に非常に重要です。うまくいった結果を高く評価し、モデルケースとして方法論を取り上げるだけではなく、患者さん中心のケアという排泄ケアの原点に立ち戻って勇気を持つことができるよう、仲間と意識づけをしましょう。
西村かおる先生
「近森病院精神科のコンチネンスケアチーム発足に際して、私は外部からアドバイザーという形で入り、スタッフの変化を見守りました。チームスタッフは、不安や迷い、戸惑いなどがありましたが、仲間の結束を強めながら乗り越えて行きました。その姿から、ケアに対する思いとチームで基本を理解することがいかに大事かを再認識させてもらいました。
まずは、チームで希望を持つこと、前向きな考え方をすることが大切です。」
2025年3月
8分09秒
2025年9月作成
【第1回】排泄ケア、それは・・・
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第2回】排泄ケアの基本
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第3回】排泄アセスメントの実際(1)
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第4回】排泄アセスメントの実際(2)
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第5回】排泄と食事の関係
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第6回】排便促進のポイント
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第7回】下剤に頼らない排便ケア-近森病院の取り組み① チーム発足-
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
【第9回】エコーによる排便アセスメント
【監修】日本コンチネンス協会 名誉会長/コンチネンスジャパン株式会社 専務取締役 西村 かおる 先生
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