試験デザイン | プラセボ対照無作為化二重盲検多施設共同並行群間比較試験 |
目的 | 慢性便秘症患者を対象にグーフィス®10mg又はプラセボを1日1回14日間経口投与し、投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量を主要評価項目とした二重盲検比較試験において、グーフィス®のプラセボに対する優越性を検証すると共に、安全性を検討することを目的とした。 |
対象 | 慢性便秘症患者133例(有効性解析対象〔FAS*1)〕:132例、安全性解析対象:132例)RomeⅢの機能性便秘の診断基準を参考として、同意取得時の6ヵ月以上前から自発排便回数が平均3回/週未満であり、かつ自発排便に関連した、①排便の25%以上にいきみがある、②排便の25%以上に兎糞状便又は硬便がある、③排便の25%以上に残便感がある、の3つのうち1つ以上の症状を有している慢性便秘症患者を対象とした。 プラセボ群:63例、グーフィス®10mg群:69例 |
投与方法 | 治験薬投与開始前の排便回数の調査期間として2週間の観察期間を設定した後、1日1回朝食前にグーフィス®10mg又はプラセボを14日間経口投与した。被験者は定められた時期に来院し、外来で観察・検査等が行われた。 |
評価項目 | 〈有効性に関する評価項目〉 主要評価項目(検証的解析項目)
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解析計画 | 主要評価項目である投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量*2)について、FASを解析対象とし観察期間第2週の自発排便回数を共変量とした共分散分析(ANCOVA)を適用した。 自発排便回数、完全自発排便回数については要約統計量を算出した。 |
自発排便:下剤/浣腸あるいは摘便なしに発現する排便。本治験においては、観察期間開始前日に下剤を使用した場合、又は観察期間開始後に救済薬(ビサコジル坐剤10mg)を使用した場合、使用後24時間以内の排便は自発排便としない。
完全自発排便:残便感のない自発排便
排便回数:「トイレに入ってから出るまでに生じた排便」を1回とカウントした(例:一度排便し、少し時間があいて再度排便した場合でも、トイレから出ていなければ1回とカウントする)。一方、排便後にトイレを出て再びトイレに入って排便した場合は、別々の排便としてカウントした。
*1)FAS:Full Analysis Set(最大の解析対象集団)治験薬が1回以上投与され、何らかの有効性に関する観測値を持つすべての被験者による集団を「最大の解析対象集団」とした。なお、排便回数の各週の評価可能日が5日未満の場合には、該当週の排便回数は欠測値として扱った。
*2)変化量=観察期間第2週データをベースライン値とした。
2)Sakakibara R, et al.: J Neurol Neurosurg Psychiatry 2003; 74: 268-272 より作図
対象 | パーキンソン病患者12例(男性10例、女性対象:2例)※1および健康成人10例(男性7例、女性3例)※2 |
方法 | 20個の放射線不透過性マーカーが含まれたカプセルを1日1回朝食後に6日間服用し、1週間後に腹部X線を撮影した。右結腸、左結腸、S状結腸及び直腸の3つの区分における残存マーカー数をカウントした。マーカー1個は通過時間の1.2時間に相当するため、残存マーカー数に1.2をかけ、各区分の通過時間を算出した。 |
対象 | 通院中の進行期パーキンソン病患者のうち1つ以上の非運動症状があり抗パーキンソン症候群治療下でwearing offを示した996例(国内35施設での多施設共同観察研究)。年齢(平均値±標準偏差):68.1±8.8歳、女性:624名(62.7%) |
方法 | Movement Disorder Society Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(MDS-UPDRS)PartⅠを用いて、パーキンソン病に付随する非運動症状の割合を検討した。 |
Limitation | 当研究は日本のみで実施されたものであり、結果は海外で適用できない。また、当研究ではMMSEスコアが23以下の患者を除外しており、認知障害が過小評価された可能性がある。 |
研究概要 | 中国 首都医科大学附属北京天壇医院のパーキンソン病患者306例を、便秘あり群(n=188)と便秘なし群(n=118)に分け、日常生活動作を評価するADLスケール、パーキンソン病患者の全般的なQOLを評価するPDQ-39等を用いて評価、比較した。 |
フローチャート2
目的 | 慢性便秘症を合併するパーキンソン病患者に対するグーフィス®投与の有効性及び安全性を検討すること。 | ||||
試験デザイン | 2週間の観察期間と4週間の治療期間からなる、多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験 | ||||
対象・方法 | 慢性便秘症を合併した20歳以上のパーキンソン病患者135例にインフォームド・コンセントを行い一次登録した(Visit 1,-2週時)。2週間の観察期間の後、77例を最終登録し、グーフィス®群(n=38)とプラセボ群(n=39)に無作為に割り付け(Visit 2, 0週時=ベースライン)、試験薬(グーフィス®10mg、またはプラセボ)を4週間投与した。試験薬は1日1回、食前に服用させた。投与後24時間に自発排便がみられない場合、過剰な効果や不快感が認められた場合は、試験者または患者の判断で用量を調節した(グーフィス®の最大投与量は15mg/日までとした)。また、有害事象による中断も認めた。なお、パーキンソン病の治療は、レボドパ/カルビドパ水和物経腸ゲルの投与を除き並行して行われた。救済薬としてビサコジル坐剤10mgの服用を1日2回まで認めたが、グーフィス®以外の便秘症治療薬の使用は認めなかった。患者には一次登録時に排便日誌を提供し、毎日、排便の様子等を記録させた。患者は治療期間中の2週時(Visit 3)、4週時(Visit 4)に来院し、毎日の自発排便(坐剤、浣腸、摘便を用いない排便)回数、便形状、併用薬、QOL、安全性について排便日誌にて報告した。
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評価項目 | 有効性
有害事象(観察期間も含め全試験期間中)等 |
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解析計画 |
※※)Nakajima A, et al.: J Gastroenterol 2018; 53: 525-534 |
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Limitation |
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注1) LEDD:levodopa-equivalent daily dose(L-DOPA換算用量相当量) 週毎のLEDD(Mean±SD)は、グーフィス®群:65.1±508.1mg/日、プラセボ群:733.8±435.3mg/日であった。
注2) 当研究では、登録前に慢性便秘症治療薬を服用していなかった患者に対してもグーフィス®を投与しましたが、保医発1127 第2号でグーフィス®について以下の通り記載されていますのでご留意ください。「本製剤の使用に当たっては、他の便秘症治療薬(ルビプロストン製剤、リナクロチド製剤、マクロゴール4000配合製剤及びラクツロース製剤を除く。)で効果不十分な場合に、器質的疾患による便秘を除く慢性便秘症の患者へ使用すること。(保医発1127 第2号)」
注3) 合併症は、糖尿病、腎疾患、肝疾患、胆管疾患、開腹術歴、その他に関するデータを収集した。各群の合併症は以下の通りであった。グーフィス®群:高血圧11例、脂質異常症10例、糖尿病7例、その他57例(3例以上のもの不眠症4例、脊柱管狭窄症3例、腰部脊柱管狭窄症3例)。プラセボ群:高血圧5例、脂質異常症8例、糖尿病6例、その他51例(3例以上のもの逆流性食道炎4例、不眠症3例、腰部脊柱管狭窄症3例)
6)Hatano T, et al.: Mov Disord Clin Pract 2024; 11(4): 352-362 doi: 10.1002/mdc3.13972
BSFSの週ごとの中央値の平均値は下表の通りであり、1週時、2週時において両群間に有意差が認められた(1週時:p=0.0057、名目上のp値、Wilcoxonの順位和検定、2週時:p=0.0119、名目上のp値、Wilcoxonの順位和検定)。ベースライン時に、硬便である1・2型であった患者は、グーフィス®群18例、プラセボ群17例であった。グーフィス®群において、4週時に10例(59%)が1・2型から普通便である3~5型に変化し、2例(12%)が軟便である6型に変化した。1・2型から変化がない患者は5例(29%)であった。プラセボ群において、4週時に6例(35%)が1・2型から3~5型に変化し、11例(65%)には変化がみられなかった。
また、ベースライン時に1・2型、または3~5型であった患者の週ごとの変化は下図の通りであった。
グーフィス®群では、1週時に11例が1・2型から3~5型に変化し、4例が3~5型から6・7型に変化した。プラセボ群では、1週時に3例が1・2型から3~5型に変化した。プラセボ群において、4週時に3~5型を報告した患者は6例であった。
監修者コメント
パーキンソン病患者の慢性便秘症※に対するグーフィス®の有効性・安全性を、プラセボ対照二重盲検比較試験によって検討した。主要評価項目である、4週時におけるベースライン時からの自発排便回数の変化量についての両群間の差には有意差は認められなかった(95%CI:-0.57, 2.09、p=0.2601、名目上のp値、ベースライン時の自発排便回数と性別を共変量としたANCOVA、95%CI:-0.12, 0.31、p=0.3742、名目上のp値、MMRM[感度分析])。これについては、サンプルサイズが当初の想定よりも小さかったこと、プラセボ群の自発排便回数が高めであったこと、患者の組み入れにおいて2週間の観察期間の自発排便回数が6回未満であることを必須としなかったこと、患者の判断による用量調節を許容したことなどの要因が考えられる。一方で、グーフィス®群における週当たりの自発排便回数については、ベースライン時と4週時の比較において、有意な増加が認められた(p=0.0079、名目上のp値、対応のあるt検定)。
今後、更なるグーフィス®のパーキンソン病患者の慢性便秘症治療に対するエビデンスの蓄積が期待される。
※慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)
2025年3月作成
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