精神疾患外来患者の便秘症状に対するエロビキシバットの有用性評価:単施設・後向き観察研究

日本標準商品分類番号 872359/医薬品リスク管理計画対象製品 精神疾患外来患者の便秘症状に対するエロビキシバットの有用性評価:単施設・後向き観察研究 胆汁酸トランスポーター阻害剤/グーフィス錠5㎎ 2.禁忌(次の患者には投与しないこと)2.1 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.2 腫瘍、ヘルニア等による腸閉塞が確認されている又は疑われる患者[腸閉塞を悪化させるおそれがある。]

Effectiveness and safety of elobixibat on chronic constipation in psychiatric disorder outpatients: a single center, retrospective study.
笹 征史:最新精神医学 2021;26(6):553-560
(本研究は、持田製薬株式会社及びEAファーマ株式会社による資金提供を受け、実施された。)

このページでは、下記2つの臨床試験の結果をご紹介いたします。
◆ 試験① 国内長期投与試験(簡易版)
◆ 試験② 精神疾患外来患者の便秘症状に対するエロビキシバットの有用性評価:単施設・後向き観察研究

「禁忌を含む注意事項等情報」等は、Drug Informationをご参照ください。

試験① 国内長期投与試験(簡易版)

一部承認外の成績(用法及び用量)が含まれるデータですが、長期投与時の承認時評価資料のため紹介します。
EAファーマ株式会社:社内資料(慢性便秘患者における長期投与時の安全性、有効性の検討)<承認時評価資料>
Nakajima A, et al.:Lancet Gastroenterol Hepatol 2018;3(8):537-547
(著者にEAファーマ株式会社よりアドバイザー料を受領している者が含まれる。当研究はEAファーマ株式会社、持田製薬株式会社の支援にて行われた。)

試験概要

試験デザイン 非盲検多施設共同試験
対象・方法 慢性便秘患者341例を対象に、2週間の観察期間の後、1日1回朝食前にグーフィス®を52週間経口投与した。初期投与量として10mgを1日1回7日間投与し、それ以降は症状に応じて1日1回、5、10又は15mgの間で適宜増減とした。
評価項目 〈有効性に関する評価項目〉
  • 観察期間第2週からの変化量と排便回数の推移(自発排便・完全自発排便)
  • Bristol便形状スケールに基づいた便硬度
〈安全性に関する評価項目〉
  • 有害事象、副作用
解析計画 FASを解析対象集団とし、投与期間各週における自発排便回数、完全自発排便回数について要約統計量を算出した。観察期間第2週からの変化量について、要約統計量を算出し、投与期間第4、12、24、36、52週において1標本t-検定を行った。
●検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

自発排便:下剤/浣腸あるいは摘便なしに発現する排便。本治験においては、観察期間開始3日前から観察期間開始前日までに使用した下剤および救済薬(ビサコジル坐剤10mg)使用後24時間以内の排便は自発排便としない。
完全自発排便:残便感のない自発排便
排便回数:「トイレに入ってから出るまでに生じた排便」を1回とカウントした(例:一度排便し、少し時間があいて再度排便した場合でも、トイレから出ていなければ1回とカウントする)。一方、排便後にトイレを出て再びトイレに入って排便した場合は、別々の排便としてカウントした。

*FAS:Full Analysis Set(最大の解析対象集団)治験薬が1回以上投与され、何らかの有効性に関する観測値を持つすべての被験者による集団を「最大の解析対象集団」とした。なお、排便回数の各週の評価可能日が5日未満の場合には、該当週の排便回数は欠測値として扱った。

有効性

観察期間第2週からの変化量と排便回数の推移(自発排便・完全自発排便)

自発排便回数、完全自発排便回数について、観察期間第2週と投与期間第4週、第12週、第24週、第36週及び第52週の時点における変化量について比較検定を行った。いずれの時点においても観察期間第2週と比較して有意な増加が認められた(いずれもp<0.0001、名目上のp値、1標本t-検定)。
週あたりの自発排便回数及び完全自発排便回数は、投与期間第1週から増加し52週時点まで下記の通り推移した。
観察期間第2週からの変化量
グラフ/縦軸が変化量(回 週)、横軸が投与期間、有効性解析対象例(n=340)Mean±SD *:p<0.0001(自発排便回数・完全自発排便回数ともに観察期間第2週との1標本t-検定)

Bristol便形状スケールに基づいた便硬度

Bristol便形状スケールの1週間あたりの中央値(Mean±SD)は、観察期間第2週2.05±1.02、投与期間第1週3.88±1.50、第2週3.80±1.44であり、第1週以降は3.60~3.98で第52週まで下記の通り推移した。
Bristol便形状スケールに基づいた便硬度(1週間あたりの中央値)
グラフ/縦軸が便硬度、横軸が投与期間、有効性解析対象例(n=340)Mean±SD
*Lewis SJ, et al.:Scand J Gastroenterol 1997; 32: 920-924より改変
※1回の排便で複数の形状の便が出た場合は、一番最初に出た便の形状を記録した(例:出始めは硬い便であったが、途中から軟便に変わった場合、最初の硬い便を記録)。

安全性

有害事象の発現率は77.6%(264/340例)であった。2%以上発現した有害事象は鼻咽頭炎25.6%(87/340例)、腹痛25.0%(85/340例)、下痢15.9%(54/340例)、下腹部痛及び悪心各5.0%(17/340例)、上気道の炎症3.8%(13/340例)、インフルエンザ、腹部膨満及び肝機能検査異常各3.5%(12/340例)、腹部不快感3.2%(11/340例)、咽頭炎2.9%(10/340例)、気管支炎、胃腸炎、上腹部痛及び背部痛各2.6%(9/340例)、湿疹2.4%(8/340例)、齲歯、胃炎、軟便及び血中クレアチンホスホキナーゼ増加各2.1%(7/340例)の20事象であった。重篤な有害事象は1.5%(5/340例:「くも膜下出血・硬膜下血腫・頭蓋骨骨折・硬膜下ヒグローマ」、「マイコプラズマ性肺炎」、「手根管症候群」、「網膜剥離」及び「鼡径ヘルニア」各1例)に認められ、「鼡径ヘルニア」は副作用とされたが、転帰は回復であった。死亡例は認められなかった。投与中止に至った副作用は18例26件(腹痛7件、下痢6件、腹部膨満、肝機能検査異常 各2件、顔面麻痺、腹部不快感、上腹部痛、鼓腸、鼡径ヘルニア、軟便、発疹、蕁麻疹、末梢性浮腫 各1件)であった。

6. 用法及び用量 通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。

試験② 精神疾患外来患者の便秘症状に対するエロビキシバットの有用性評価:単施設・後向き観察研究

Effectiveness and safety of elobixibat on chronic constipation in psychiatric disorder outpatients: a single center, retrospective study.
笹 征史:最新精神医学 2021;26(6):553-560
(本研究は、持田製薬株式会社及びEAファーマ株式会社による資金提供を受け、実施された。)

試験概要

目的 精神科クリニックを外来受診しているうつ病を含む精神疾患患者のうち、慢性便秘症を併発している患者に対するグーフィス®の便秘改善の効果及び有用性を明らかにするため後向き研究を行った。
対象 認知症以外の精神疾患治療で渚クリニックに外来通院している20歳以上の精神疾患患者のうち、排便回数が週3回未満の慢性便秘症で、2018年7月1日から2020年6月30日の間に4週間以上継続してグーフィス®の投与を受けた患者を対象とした。
方法 グーフィス®を1日1回食前に経口投与(投与量は症状に応じて1回5~15mgの間で調整)し、診療記録より次の項目を抽出し検討した(患者背景、1週間あたりの排便回数、グーフィス®の投与状況、精神疾患治療薬の使用状況及び有害事象・副作用の発現状況)。なお、データ収集の対象期間は、2018年7月1日から2020年6月30日の2年間とし、グーフィス®投与52週後までのデータを最長とした。
評価項目 主要評価項目:グーフィス®投与開始前と投与4週後における1週間あたりの排便回数の比較
副次評価項目:グーフィス®投与開始前と投与8、12、24、52週後における1週間あたりの排便回数の比較
安全性評価項目:有害事象ならびに副作用の項目と発現率、グーフィス®投与の中止率及び中止理由
解析計画 排便回数は、平均値±標準偏差(SD)にて示し、投与開始及び投与後の変化量に対し、対応のあるt検定を用いて評価を行った。有意水準は両側5%とした。有効性の解析として、患者背景(年齢・性別・精神疾患)及びグーフィス®の投与状況(初回投与量10mg/日処方症例・52週後まで継続投与が行われた症例)別の部分集団解析を実施した。なお、グーフィス®初回投与量10mg/日処方症例においては、精神疾患別についての部分集団解析を実施した。
Limitations 症状評価尺度等による精神疾患症状の評価データは収集しなかったため、グーフィス®が精神疾患に与える客観的な評価はできなかった。
●検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

患者背景

背景因子 n(%)
全症例 28(100.0)
女性 18(64.3)
年齢[歳]、平均±SD 62.3±14.6
65歳以上 14(50.0)
精神疾患  
うつ病 21(75.0)
統合失調症 4(14.3)
双極性障害 2(7.1)
不安障害 1(3.6)
向精神薬処方あり 28(100.0)
抗うつ薬 23(82.1)
抗精神病薬 9(32.1)
抗不安薬・睡眠薬 26(92.9)
グーフィス®初回投与量  
5mg/日 1(3.6)
10mg/日 19(67.9)
15mg/日 8(28.6)
SD:標準偏差
笹 征史:最新精神医学 2021;26(6):553-560

有効性

投与4週後における1週間あたりの排便回数の比較[主要評価項目]

1週間あたりの排便回数は、グーフィス®投与開始前が1.9±0.6回であったのに対し、投与4週後では4.3±1.8回と、有意に増加した
(p<0.01、名目上のp値、対応のあるt検定)。
グラフ/1週間あたりの排便回数、投与開始前、投与4週後
平均± 標準偏差
*:p<0.01,名目上のp値(vs.投与開始前)対応のあるt検定
笹 征史:最新精神医学 2021;26(6):553-560

投与開始前と投与8、12、24、52週後における1週間あたりの排便回数[副次評価項目]

グーフィス®投与8、12、24及び52週後の排便回数は、それぞれ4.4±1.7回、3.9±1.6回、3.7±1.7回及び5.1±1.6回と推移し、すべての評価時点において投与開始前と比較し、有意に増加した(いずれもp<0.01、名目上のp値、vs.投与開始前、対応のあるt検定)。
グラフ/1週間あたりの排便回数、投与開始前-観察週間(週)
笹 征史:最新精神医学 2021;26(6):553-560

患者背景(年齢・性別・精神疾患)別の1週間あたりの排便回数(サブグループ解析)

chart05_1000-400_202412
†:p<0.05、‡:p<0.01、いずれも名目上のp値、投与開始前との比較(対応のあるt検定)
SD:標準偏差
笹 征史:最新精神医学 2021;26(6):553-560

安全性

有害事象は3例(10.7%)において3件認められた。3件とも非重篤かつ軽度の下痢であり、グーフィス®減量の処置等により症状の回復が認められた。また、この有害事象3件のうち2件は、グーフィス®との因果関係がある副作用と判断された。死亡例を含む重篤な副作用はなかった。グーフィス®投与52週後までの累積中止例数は17例であった。中止理由としては効果十分が13例(76.5%)、患者希望4例(23.5%)、効果不十分1例(5.9%)、その他1例(5.9%)であった(患者希望及び効果十分に2例の重複を含む)。なお、有害事象により中止となった症例は認められなかった。

●安全性情報については最新の電子添文をご参照ください。

6. 用法及び用量 通常、成人にはエロビキシバットとして10mgを1日1回食前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、最高用量は1日15mgとする。

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