監修者コメント
今回の調査では、精神科外来患者において、便秘症の患者が一定数認められました。また、ロジスティック回帰分析の結果から、ストレスの自覚や、抗パーキンソン病薬、従来型抗うつ薬、気分安定薬の使用により便秘発症リスクが上がることが示唆されました。ストレスの自覚については、ストレスによって交感神経が優位になると腸管の蠕動運動が低下し、腸液分泌も抑制されることが一因になる可能性があると考えられます。抗パーキンソン病薬や三環系抗うつ薬は概ね抗コリン作用が強く、抗コリン作用によって、消化管運動の緊張や蠕動運動、腸液分泌の抑制作用が便秘症に影響していることが反映されたと考えられます。
精神科の診療においても、問診時や薬剤処方時に患者の日常的な排便状況を把握し、必要があれば便秘症の治療も検討するなどの対応が求められると考えます。
目的 | 精神科外来に通院する患者の便秘症有病率を把握し、便秘症に関連する因子を特定すること。 |
対象 | 2020年1月6日~4月30日にかけて、昭和大学附属烏山病院、昭和大学横浜市北部病院、森林公園メンタルクリニックの精神科外来に通院中の患者1,384例。 |
方法 | 患者に対し、排便状況、ブリストル便性状スケールによる最近の便の状態などについてのアンケートを実施、回収した。診療録より、ICD-10による診断名、治療期間、アンケート回答日における内服薬の種類、用量に関する情報等を収集し、アンケートの情報と統合したデータベースを作成して解析を行った。 便秘症の定義については、Rome Ⅳの診断基準に基づき、薬剤性便秘症についても症状としてRome Ⅳの機能性便秘症の診断基準を満たす患者は便秘症とした。また、既に緩下剤を使用している患者も便秘症とし、Rome Ⅳ診断基準を満たすこと、緩下剤を使用していることのいずれか、あるいは両方満たす患者を便秘症とした。便秘症であることを従属変数、各種因子※を独立変数としてロジスティック回帰分析を行い、便秘症に関連する因子を検討した。 ※年齢、性別、治療期間、BMI、ストレスの有無、飲酒、喫煙、外食日数/週、運動日数/週、第2世代抗精神病薬(SGA)、第1世代抗精神病薬(FGA)、抗パーキンソン病薬、新規抗うつ薬、従来型抗うつ薬、気分安定薬、睡眠薬、抗不安薬、ADHD治療薬、抗認知症薬の使用 |
Limitation | 緩下剤を内服している患者を全て便秘症に含めており、便秘症の定義が広い可能性があること、アンケートによる自己申告をデータとして用いており、正確性に疑問があること、処方されている向精神薬の投与量との関連について検討できなかったことなどがあげられる。 |
便秘症に関するロジスティック回帰分析
欠損値のない患者(n=1,284)について検討
変数増加法による。*<0.05,**<0.01,***<0.001
a 1歳増加するごとの数値,b 女性=1,男性=0, c 1増加するごとの数値,d ストレスあり=1,なし=0,e 抗パーキンソン病薬あり=1,なし=0,f 従来型抗うつ薬あり=1,なし=0,
g 気分安定薬あり=1,なし=0
佐藤諒太郎ら:臨床精神薬理 2022; 25: 551-562
1)Chang JY, et al.: Am J Gastroenterol 2010; 105(4): 822-832
対象・方法 | 1988~1993年に、米国ミネソタ州オルムステッド郡に住む20歳以上の5,262例にIBS、慢性便秘症、慢性下痢症、ディスペプシア、及び腹痛の診断のため、消化器症状についてアンケート調査(BDQ:the original Bowel Disease Questionnaire)を実施した。アンケートに回答した4,176例より不適格者を除いた3,933例を対象として、2008年までの15年間、生存状況を行政の死亡記録によって確認し、機能性消化管障害と生存率の関係を調査した。 |
結果 | 各機能性消化管障害の有無と生存率の関係を、単変量及び調整ハザード比を用いた比例ハザードモデルにて評価したところ、IBS(HR=1.06,95% CI:0.86‒1.32)、慢性下痢症(HR=1.03, 95% CI:0.90‒1.19)、ディスペプシア(HR=1.08, 95% CI:0.58‒2.02)、腹痛(HR=1.09,95%CI: 0.92‒1.30)については関連が認められなかったが、慢性便秘症については関連が認められ、慢性便秘症患者の生存率は、慢性便秘症ではない人に比べ生存率が低かった(HR=1.23, 95%CI:1.07‒1.42、チャールソン併存疾患指数による調整後のHR=1.19, 95%CI:1.03‒1.37)。 Kaplan-Meier推定による調査開始から10年経過時の生存率は、慢性便秘症あり:73%(95%CI:69-76)、慢性便秘症なし:85%(95%CI:84-86)であった。 |
Limitation | 当研究の対象者はMayo Clinicで治療を受けた者に限定されており、集団の約90%が白人であったことから、結果は他の民族集団に当てはまらない可能性がある。また、測定バイアスが結果に影響した可能性がある。 |
慢性便秘症と生存率
佐藤諒太郎ら:臨床精神薬理 2022; 25: 551-562 より作成
2)日本消化管学会編,便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症,南江堂,2023,p36
3)Valladales-Restrepo LF, et al.: Dig Dis 2020; 38: 500-506
4)Lerori AM, et al.: Neurogastroenterol Motil 2000; 12: 149-154
5)Every-Palmer S, et al.: Cochrane Database Syst Rev 2017; 1: CD01128
6)Pagano G, et al.: Parkinsonism Relat Disord 2015; 21: 120-125
7)Xiao-Ling Q, et al.: Front Neurol 2020; 11: 567574
2024年12月作成
精神疾患と便秘の関係性
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不適切な排便コントロールの影響
【監修】看護師/医療経営コンサルタント 田中 智恵子 先生
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トイレweek2024(EAファーマ協賛)特設ページにて便秘の専門医、津田桃子先生のインタビュー記事を公開
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慢性便秘症診療に直腸エコー観察は有用か? 【2】直腸エコー観察に基づいた治療アルゴリズム
【監修】横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授中島 淳 先生
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慢性便秘症診療に直腸エコー観察は有用か? 【1】病態機能評価における有用性
【監修】横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授中島 淳 先生
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「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」のポイント グーフィス®とモビコール®の紹介を含めて
【監修】九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科)准教授
伊原 栄吉 先生
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「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」におけるグーフィスⓇの位置付け
【監修】横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授
中島 淳 先生
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治療継続のコツ 治療段階を患者さんと共有する
医師と便秘症患者さんとの間には治療への意識の差がある。便秘の不快症状を訴える患者さんへの正しい治療の啓発が求められている。
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整形外科における便秘について
ロコモティブシンドロームは大きな活動性低下を招き、便秘を誘発する可能性がある。また、関節症の疼痛治療においては副作用としての便秘を予防する必要がある。
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緩和ケアにおける便秘治療のポイントとは
緩和ケアで起こる便秘の原因は様々であり、体力の温存の観点からも排便コントロールが難しく、QOLに大きな影響を与える。身体状態、食事摂取量や便秘の症状に合わせた便秘治療が求められる。
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