慢性便秘症患者の直腸感覚、大腸通過時間の改善に対する、酸化マグネシウム製剤およびグーフィス®の有効性についての比較:前向き観察研究

※器質的疾患による便秘を除く
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106(著者に、EAファーマ株式会社より助成金を受領、また、EAファーマ株式会社の顧問を務めている者が含まれる。)
【監修】国際医療福祉大学成田病院 緩和医療科 部長 結束 貴臣 先生
    国際医療福祉大学 消化器内科統括教授/熱海病院 病院長 中島 淳 先生
このページでは、下記2つの臨床試験の結果をご紹介いたします。
◆ 試験① 国内第Ⅲ相試験(簡易版)
◆ 試験② 慢性便秘症患者の直腸感覚、大腸通過時間の改善に対する、酸化マグネシウム製剤およびグーフィス®の有効性についての比較:前向き観察研究

「禁忌を含む注意事項等情報」等は、Drug Informationをご参照ください。

試験① 国内第Ⅲ相試験(簡易版)

試験概要

試験デザイン プラセボ対照無作為化二重盲検多施設共同並行群間比較試験
目的 慢性便秘症患者を対象にグーフィス®10mg又はプラセボを1日1回14日間経口投与し、投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量を主要評価項目とした二重盲検比較試験において、グーフィス®のプラセボに対する優越性を検証すると共に、安全性を検討することを目的とした。
対象 慢性便秘症患者133例(有効性解析対象〔FAS*1)〕:132例、安全性解析対象:132例)RomeⅢの機能性便秘の診断基準を参考として、同意取得時の6ヵ月以上前から自発排便回数が平均3回/週未満であり、かつ自発排便に関連した、①排便の25%以上にいきみがある、②排便の25%以上に兎糞状便又は硬便がある、③排便の25%以上に残便感がある、の3つのうち1つ以上の症状を有している慢性便秘症患者を対象とした。
プラセボ群:63例、グーフィス®10mg群:69例
投与方法 治験薬投与開始前の排便回数の調査期間として2週間の観察期間を設定した後、1日1回朝食前にグーフィス®10mg又はプラセボを14日間経口投与した。被験者は定められた時期に来院し、外来で観察・検査等が行われた。
評価項目 〈有効性に関する評価項目〉
主要評価項目(検証的解析項目)
  • 自発排便回数の変化量〔観察期間第2週 vs. 投与期間第1週〕(FAS)
〈安全性に関する評価項目〉
  • 副作用発現率
  • 臨床検査値
解析計画 主要評価項目である投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量*2)について、FASを解析対象とし観察期間第2週の自発排便回数を共変量とした共分散分析(ANCOVA)を適用した。
自発排便回数、完全自発排便回数については要約統計量を算出した。
●検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

自発排便:下剤/浣腸あるいは摘便なしに発現する排便。本治験においては、観察期間開始前日に下剤を使用した場合、又は観察期間開始後に救済薬(ビサコジル坐剤10mg)を使用した場合、使用後24時間以内の排便は自発排便としない。
完全自発排便:残便感のない自発排便
排便回数:「トイレに入ってから出るまでに生じた排便」を1回とカウントした(例:一度排便し、少し時間があいて再度排便した場合でも、トイレから出ていなければ1回とカウントする)。一方、排便後にトイレを出て再びトイレに入って排便した場合は、別々の排便としてカウントした。

*1)FAS:Full Analysis Set(最大の解析対象集団)治験薬が1回以上投与され、何らかの有効性に関する観測値を持つすべての被験者による集団を「最大の解析対象集団」とした。なお、排便回数の各週の評価可能日が5日未満の場合には、該当週の排便回数は欠測値として扱った。
*2)変化量=観察期間第2週データをベースライン値とした。

有効性

自発排便回数の変化量〔観察期間第2週 vs. 投与期間第1週〕(FAS)[主要評価項目(検証的解析項目)]

投与期間第1週における自発排便回数の観察期間第2週からの変化量(Mean±SD)は、プラセボ群1.73±1.88回、グーフィス®群6.40±4.73回であり、グーフィス®群はプラセボ群に対して自発排便回数の変化量が有意に大きく優越性が検証された(検証的解析結果、p<0.0001、共分散分析)。
〈主要評価項目(検証的解析結果)〉自発排便回数の変化量(観察期間第2週 vs. 投与期間第1週)
グラフ/縦軸が変化量(回/週)、横軸がプラセボ群 n=63、グーフィスⓇ10mg群 n=67
自発排便回数(観察期間第2週及び投与期間第1週)
グラフ/縦軸が回数(回/週)、横軸がプラセボ群 n=63/グーフィスⓇ10mg群 n=67/観察期間第2週、プラセボ群 n=63/グーフィスⓇ10mg群 n=67/投与期間第1週

安全性

副作用発現率

副作用の発現率は、プラセボ群7.9%(5/63例)、グーフィス®群30.4%(21/69例)であった。
いずれかの群で5%以上発現した副作用は、下表の通りであった。
本試験において死亡例を含む重篤な副作用は、いずれの投与群においても認められなかった。投与中止に至った副作用はプラセボ群0例、グーフィス®群4例9件(腹痛、下痢各4件、悪心1件)で認められた。
いずれかの群で5%以上発現した副作用
表/縦軸が副作用の種類、腹痛、下痢、横軸がプラセボ群 (n=63)、グーフィスⓇ10mg群 (n=69)

臨床検査値

血清LDL-コレステロール濃度(Mean±SD)は、本登録日、2週来院時(中止日)の順に、プラセボ群において113.4±31.5mg/dL、114.9±31.4mg/dL、グーフィス®群117.9±29.9mg/dL、104.5±25.9mg/dLであった。
血清LDL-コレステロール濃度
グラフ/縦軸がLDL-コレステロール、横軸がプラセボ群 n=63/グーフィスⓇ10mg群 n=69/本登録日、プラセボ群 n=63/グーフィスⓇ10mg群 n=67/2週来院時(中止日)

慢性便秘症患者の直腸感覚、大腸通過時間の改善に対する、酸化マグネシウム製剤およびグーフィス®の有効性についての比較:前向き観察研究

※器質的疾患による便秘を除く
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106(著者に、EAファーマ株式会社より助成金を受領、また、EAファーマ株式会社の顧問を務めている者が含まれる。)
【監修】国際医療福祉大学成田病院 緩和医療科 部長 結束 貴臣 先生
    国際医療福祉大学 消化器内科統括教授/熱海病院 病院長 中島 淳 先生
便秘症の治療満足度は患者、医療者双方にとって依然として低いことが指摘されている(海外データ含む)1,2)。便秘症の顕著な症状のひとつとして、患者の50%に影響を与えているとされる便意の消失があげられ、便意を回復させることが患者の治療満足度を高めることに関連するとした報告がある3)
わが国の「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」では、便秘症患者には、まず生活習慣の改善、食事療法などを指導し、便秘症の改善がみられなければ、酸化マグネシウム製剤などの浸透圧性下剤を用いた薬物療法を行うこととなっている4)。実際、浸透圧性下剤、特に酸化マグネシウム製剤は広く処方されているが、これらは主に腸管内腔での水分分泌を促進させる働きをもつ一方、大腸運動や直腸感覚に対する直接的な薬理学的作用は示さないと考えられる。
浸透圧性下剤で改善が見られない場合は、上皮機能変容薬あるいは胆汁酸トランスポーター阻害薬といった新規作用機序をもつ便秘症治療薬を用いることになる4)。胆汁酸トランスポーター阻害薬であるグーフィス®は、その機序により大腸内に胆汁酸を流入させ5~7)、胆汁酸を介して①水分分泌促進、②大腸運動促進、③便意促進といった3つの排便促進作用(Triple Action)をもたらすと考えられている5,8~12)。近年、Manabeらによって、グーフィス®は慢性便秘症患者の直腸感覚を改善したことが報告され13)、便意を回復させる作用についても期待されているが、便意消失や大腸通過遅延に対する有効性は明らかとなっていない。
便秘症患者の便意を回復させ治療満足度を高める便秘症治療とは何か?その答えを探る一つの試みとして、このたび、酸化マグネシウム製剤とグーフィス®を慢性便秘症患者に投与し、直腸感覚、大腸通過時間の改善に対する影響を調べ、さらに両者を比較検討したので報告する。

1)Hayashi T, Miwa H:J Clin Gastroenterol 2022;56:e64e70
2)Harris LA, et al.:Adv Ther 2017;34:26612673
3)Ohkubo H, et al.:Clin Transl Gastroenterol 2020;11:e00230
4)日本消化器病学会編, 便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症, 2023, 南江堂, p.xxiii
5)Acosta A, Camilleri M:Ther Adv Gastroenterol 2014;7(4):167175(著者のCamilleriはエロビキシバットの創薬会社であるアルビレオ社より研究助成金を受領している。)
6)EAファーマ株式会社:社内資料(胆汁酸トランスポーターに対する作用)
7)EAファーマ株式会社:社内資料(胆汁酸吸収に対する作用)
8)Mekhjian HS, et al.:J Clin Invest 1971;50:15691577
9)Mitchell WD, et al.:Gut 1973;14(5):348353
10)Bunnett NW:J Physiol 2014;592:29432950
11)眞部紀明,春間賢:肝胆膵 2018;77(1):6569
12)Bampton PA, et al.:Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 2002;282:G443G449
13)Manabe N, et al.:BMJ Open Gastroenterol 2023;10 :e001257

排便のメカニズム

排便に際しては、腸内で移送される便に一定量の食物残渣があり水分を十分に含んでいること、大腸の蠕動運動が正常であること、直腸に便塊が移送された際に便意を感じられることが重要となります1,2)
排便のメカニズム1)
排便のメカニズムを示す図

1)平塚 秀雄.:治療 1994;76(2):377-381より改変
2)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会 編:慢性便秘症診療ガイドライン 2017, 南江堂, 2017, p.25-27

慢性便秘症患者における便意消失率

Ohkubo H, Nakajima A, et al.: Clin Transl Gastroenterol. 2020 Sep;11(9):e00230(著者に持田製薬株式会社から研究費を受領した者が含まれる。当研究は持田製薬株式会社の支援にて行われた。)
慢性便秘症群と非慢性便秘症群の便意消失率の比較
慢性便秘症群と非慢性便秘症群の便意消失率の比較を示すグラフ
Ohkubo H, Nakajima A, et al.: Clin Transl Gastroenterol.2020 Sep;11(9):e00230より作図
慢性便秘症群のうち治療を受けている患者での便意消失率(n=443)
慢性便秘症群のうち治療を受けている患者での便意消失率を示すグラフ
Ohkubo H, Nakajima A, et al.: Clin Transl Gastroenterol.2020 Sep;11(9):e00230より作図
対象・方法 日本人20,986人を対象としたインターネットによるアンケート調査を実施し、機能性便秘に関するRomeⅣ診断基準に合致し、過敏性腸症候群ではない者の集団を慢性便秘症群(n=2,587)、機能性便秘でも過敏性腸症候群でもない者で、慢性便秘症群の年齢区分、性別と同数になるようにマッチさせた集団を非慢性便秘症群(n=2,587)とした。
アンケートでは、便意の頻度について、「全くない」「ほとんどない」「普通」「いつも」の4つから回答させた。便意が「全くない」「ほとんどない」と回答した者を便意消失とし、2群間の便意消失率を比較した。
Limitation 当研究のlimitationとして、インターネットを用いたアンケート調査をもとに行われたため、放射線不透過マーカー検査、直腸肛門圧検査、排便造影検査などを行っておらず、病態生理学的な分類ができなかったことなどがあげられる。

高齢者と若年者の結腸通過時間の違い[海外データ]

Madsen JL, et al.:Age and Ageing 2004;33(2):154-159
高齢者と若年者での結腸通過時間
高齢者と若年者での結腸通過時間を示すグラフ
Madsen JL, et al.:Age and Ageing 2004;33(2):154-159
高齢者および若年者における消化管運動の評価結果
高齢者および若年者における消化管運動の評価結果を示す表
Madsen JL, et al.:Age and Ageing 2004;33(2):154-159より作表
年齢、性差、BMIおよび喫煙が消化管運動に与える影響
年齢、性差、BMIおよび喫煙が消化管運動に与える影響を示す表
Madsen JL, et al.:Age and Ageing 2004;33(2):154-159より作表
対象・方法 デンマークの健康高齢者16例(男性8例、女性8例)と、健康若年者16例(男性8例、女性8例)を対象とした。
朝、ラベルマーカーを含む1600kJの固液混合食(パン80g、オムレツ120g、水200g)を摂取させた後、ラベルマーカーが小腸から検出されなくなるまで、30分間隔でガンマカメラにて確認した。翌日からは24時間毎にラベルマーカーが結腸から排出されるまでガンマカメラにて確認し、結腸通過時間を測定した。水には111In-DTPA、オムレツには99mTcをそれぞれ加え、ラベルマーカーとした。
Limitation 当試験のlimitationとして、身体活動レベル、食習慣、心理的要因のばらつきが、結果に影響を与えた可能性があること、若年女性の胃排出評価が月経周期を考慮した時期に行われなかったことなどがあげられる。

慢性便秘症患者の直腸感覚、大腸通過時間の改善に対する、酸化マグネシウム製剤およびグーフィス®の有効性についての比較:前向き観察研究

※器質的疾患による便秘を除く

試験概要

目的 酸化マグネシウム製剤とグーフィス®について、慢性便秘症患者の便意、直腸感覚、大腸通過時間に対する有効性を比較、検討すること。
対象・方法 2023年7月~2024年9月にかけて、国際医療福祉大学成田病院を主要施設とする、神奈川歯科大横浜クリニック、岩崎内科クリニック(神奈川県)の計3施設において、実臨床下における前向き観察研究として行った。
3施設の外来患者より、以下の組み入れ基準に合致した慢性便秘症患者73例を登録した。
〈組み入れ基準〉
  • 消化器専門医により、Rome Ⅳ 診断基準を満たし慢性便秘症と診断された患者であること
  • 18歳以上であること
  • 直腸感覚検査、大腸通過時間検査、直腸エコー検査が実施可能なこと
  • 問診票、問診を完遂できること
  • 他の施設で便秘の初回治療を受けても改善がみられなかった患者
また、除外基準は以下の通りであった。
〈除外基準〉
  • 意思疎通が困難な患者
  • 服薬が困難な患者
  • 妊婦、授乳婦
  • その他、医師により不適と判断された患者
全体の試験フローは下図の通りである。
ベースライン来院時に1回目の大腸通過時間検査、直腸感覚検査、直腸エコー検査を実施した後、酸化マグネシウム製剤、あるいはグーフィス®が処方された。酸化マグネシウム製剤を用いるか、グーフィス®を用いるかについては、担当医の裁量に委ねられた。酸化マグネシウム製剤を投与された患者(酸化マグネシウム製剤群)は30例、グーフィス®を投与された患者(グーフィス®群)は43例であった。
救済薬として、両群に酸化マグネシウム製剤250~500mg/日の服用が認められた。直腸感覚検査、大腸通過時間検査への影響の可能性から、刺激性下剤の服用は認められなかった。
下痢が見られた場合は、酸化マグネシウム製剤については250~500mg、グーフィス®については5mgの減量が認められた。
■試験フロー
試験フローを示す図Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106
●酸化マグネシウム製剤の使用にあたっては、電子添文をご確認ください。
評価項目・評価方法 [排便記録]
  • 週あたりの自発排便※1回数、完全自発排便※2回数の変化
    ※1:救済薬を用いずに発現した排便 ※2:救済薬を用いずに発現した残便感のない排便
  • いきみ、残便感、便秘治療の満足度(参考情報)についての改善
  • 便意消失から便意ありへの移行率
ベースライン時に便意消失であったが治療後に便意ありとなった患者の割合とした。
便意:5段階のリッカートスケール(1.いつもある 2.たいていある 3.ややある 4.まれにある 5.まったくない)を用いて評価し、1~3を便意あり、4~5を便意消失とした。
いきみ、残便感:5段階リッカートスケール(便意と同様)を用いて評価し、1~3を症状あり、4~5を症状なしとした。
便秘治療の満足度(参考情報):5段階リッカートスケール(1.非常に満足 2.やや満足 3.普通 4.やや不満足 5.不満足)を用いて評価し、1~3を満足、4~5を不満足とした。
便意消失、いきみ、残便感、便秘治療の満足度は、治療後時点の5段階リッカートスケールにおいて、ベースライン時より少なくとも1ポイント良い方向に改善された場合に改善とした。
[直腸感覚検査]
  • 直腸感覚の変化(FDDVの、ベースライン来院時と治療後来院時の比較)
直腸感覚検査はバルーン法を用いて測定した。プロトコールを下図Aに示す。
ベースライン来院時の1回目の直腸感覚検査実施の10日前に、すべての常用便秘薬、救済薬の服用を中止させた。治療後来院時の2回目の直腸感覚検査は、便秘治療薬を継続しながら実施した。
バルーンは5mL/分の割合で拡張させ、FCSV(fast constant sensation volume:腸管の伸展を感じはじめる容量)、FDDV(fast defecation desire volume:便意を感じはじめる容量)、MTV(maximum tolerated volume:便意を我慢できる最大許容容量)を測定した。測定は盲検化された臨床検査技師が行った。
[大腸通過時間検査]
  • 大腸通過遅延型から大腸通過正常型への移行率
大腸通過時間検査は、放射線不透過マーカーを用いて測定した。プロトコールを下図Bに示す。
ベースライン来院時の1回目の大腸通過時間検査では、マーカー投与5日前からマーカー投与後5日後に行うX線撮像までの計10日間、すべての常用便秘薬、救済薬の服用を中止させた。治療後来院時の2回目の大腸通過時間検査は、便秘治療薬を継続しながら実施した。
X線撮像は、盲検化された放射線技師によりマーカー投与3日後、5日後に行われた。大腸通過正常型、大腸通過遅延型の診断はHinton法により行った。マーカー投与5日後の腹部X線画像でマーカー残存率が20%以上であった場合は大腸通過遅延型、20%未満の場合は大腸通過正常型と診断した。治療前後のマーカー残存率を比較して、大腸通過遅延型から大腸通過正常型への移行率を評価した。
■直腸感覚検査、大腸通過時間検査のプロトコール
直腸感覚検査、大腸通過時間検査のプロトコールを示す図Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106, Supplementary Figure 1
解析方法
  • すべての場合において、p値<0.05は多重比較の調整なしに統計的に有意であるとみなされた。
  • 欠測データは補完せずに解析した。
  • グループ間の比較において、連続変数についてはStudent’s t検定、カテゴリー変数についてはχ2検定を用いて解析した。
Limitation 当研究のlimitationとして、観察研究であったこと、不均一な集団であったこと、サンプルサイズが小さかったことなどがあげられる。また、酸化マグネシウム製剤あるいはグーフィス®の選択が主治医の裁量に委ねられたことから選択バイアスがあったと考えられる。
● 検証的な解析以外で得られたp値を名目上のp値とした。

結果

[患者背景]

酸化マグネシウム製剤群の酸化マグネシウム製剤の平均投与量(±SD)は1,413±400mg、平均投与期間(±SD)は27±9日、グーフィス®群のグーフィス®の平均投与量(±SD)は13±3mg、平均投与期間(±SD)は27±9日であった。
両群ともアドヒアランス率は100%、救済薬の使用回数は0回、投与量の増減は認められなかった。
その他、ベースライン時の排便状況、直腸エコー所見、大腸通過時間型、直腸感覚検査については下表の通りであった。
患者背景
患者背景を示す表
※:連続変数についてはStudent’s t検定、カテゴリー変数についてはχ2検定を用いた。p値はいずれも名目上のp値。
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106より作表

排便記録

週あたりの自発排便回数、完全自発排便回数の変化
治療後の週あたりの自発排便回数(Mean±SD)は、酸化マグネシウム製剤群1.9±2.0回/週、グーフィス®群2.6±2.2回/週であり、有意差は認められなかった(p=0.172、名目上のp値、Student’s t検定)。治療後の週当たりの完全自発排便回数(Mean±SD)については、酸化マグネシウム製剤群0.7±0.4回/週、グーフィス®群1.9±1.3回/週であり、有意差が認められた(p=0.013、名目上のp値、Student’s t検定)。
週あたりの排便回数
週あたりの排便回数を示すグラフ
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106
いきみ、残便感、便秘治療の満足度(参考情報)
治療によるいきみの改善割合は、酸化マグネシウム製剤群57%、グーフィス®群65%であり、有意差は認められなかった(p=0.465、名目上のp値、χ2検定)。治療による残便感の改善割合は、酸化マグネシウム製剤群50%、グーフィス®群79%であり、有意差が認められた(p=0.009、名目上のp値、χ2検定)。
参考情報である便秘治療の満足度については、酸化マグネシウム製剤群47%、グーフィス®群70%であり、有意差が認められた(p=0.047、名目上のp値、χ2検定)。
いきみ、残便感の改善割合、便秘治療の満足度(参考情報)
いきみ、残便感の改善割合、便秘治療の満足度(参考情報)の改善割合を示すグラフ
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106
便意消失から便意ありへの移行率
治療後の便意消失の改善率は、酸化マグネシウム製剤群33%(10/30)、グーフィス®群65%(28/43)であり、有意差が認められた(p=0.008、名目上のp値、χ2検定)。
治療後に便意ありとなった患者の割合は、酸化マグネシウム製剤群30%(9/30)、グーフィス®群70%(30/43)であり、有意差が認められた(p=0.001、名目上のp値、χ2検定)。
ベースライン時に便意消失であったが治療後に便意ありになった患者の割合は、酸化マグネシウム製剤群19%(4/21)、グーフィス®群70%(23/33)であり、有意差が認められた(p=0.0003、名目上のp値、χ2検定)。
酸化マグネシウム製剤、グーフィス®による治療効果の比較
酸化マグネシウム製剤、グーフィス®による治療効果の比較を示すグラフ
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106

直腸感覚検査

直腸感覚の変化(FDDVのベースライン来院時と治療後来院時の比較)
治療によるFDDVの絶対変化量(Mean±SD)は、酸化マグネシウム製剤群-0.1±22mL、グーフィス®群-35±33mLであり、有意差が認められた(p<0.0001、名目上のp値、Student’s t検定)。
便意を感じはじめる容量(FDDV)の絶対変化量
便意を感じはじめる容量(FDDV)の絶対変化量を示すグラフ
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106

大腸通過時間検査

大腸通過遅延型から大腸通過正常型への移行率
ベースライン時に大腸通過遅延型であった患者が治療後に大腸通過正常型へ移行した患者の割合は、酸化マグネシウム製剤群37%(7/19)、グーフィス®群87%(26/30)であり、有意差が認められた(p=0.003、名目上のp値、χ2検定)。
大腸通過遅延型から大腸通過正常型への移行率
大腸通過遅延型から大腸通過正常型への移行率を示すグラフ
Kessoku T, et al.:Neurogastroenterol Motil 2025;0:e70106

安全性

当研究では安全性に関する情報を収集、評価していない。

●グーフィス®の安全性については、DI頁の安全性情報をご参照ください。

まとめ
  • 治療後の便意消失の改善率は、酸化マグネシウム製剤群33%、グーフィス®群65%であり、有意差が認められた(p=0.008, 名目上のp値, χ2検定)。
  • 治療後の、バルーン法を用いた直腸感覚検査において便意を感じはじめる容量(FDDV)の絶対変化量は、酸化マグネシウム製剤群-0.1mL、グーフィス®群-35mLであり、有意差が認められた(p<0.0001, 名目上のp値, Student’s t検定)。
  • ベースライン時に大腸通過遅延型であった患者が、治療後に大腸通過正常型となった移行率は、酸化マグネシウム製剤群37%、グーフィス®群87%であり、有意差が認められたp=0.003, 名目上のp値, χ2検定)。
  • 便意を評価する問診、直腸感覚と大腸通過時間の測定は、水分分泌、大腸蠕動、便意消失といった患者の病態に応じた適切な薬剤を選択する上で重要である。
  • 当観察研究で得られた知見を基に、さらに大規模なインターベンション研究を行っていく必要がある。

2025年11月作成

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