| 対象・方法 | 2017年5月~2019年12月までの、高知県における急性非代償性心不全による入院患者1,061例を登録した高知急性非代償性心不全レジストリ(KochiYOSACOI Study)より、退院までに死亡した患者30例、退院時のデータ欠損がある患者316例を除外した残りの715例のデータを解析対象とし、退院から2年以内の生存率を得るため2021年までフォローアップした。 入院前から退院まで下剤を継続して服用していた患者を便秘症合併とし、患者を便秘症合併群と便秘症非合併群に分けた。患者背景を傾向スコアマッチング法によりマッチさせ両群104例とし、退院後2年以内の全体の生存率、心血管疾患に対する生存率をlog-rank検定により比較した。 |
| Limitation | 傾向スコアマッチングではすべての交絡因子を除外できないので、選択バイアスが誘発された可能性がある。便秘に関連する症状については包括的に評価していない。また、服用した便秘症治療薬は患者間で異なっており、これらの選択が心不全の予後に及ぼす影響については明らかにしていない。便秘症や心不全の重症度に関与すると考えられる、患者の身体活動や食習慣に関する背景については調査していない。便秘症の重症度については評価していない。QOLに対する便秘症の影響については調査していない。 |
全体の生存率
全体の生存率
心血管疾患に対する生存率
心血管疾患に対する生存率
高齢者と若年者での結腸通過時間
| 対象 | デンマークの健康高齢者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢81歳[74-85歳]、平均body mass index 25.0kg/m2[21.6-29.7kg/m2])と健康若年者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢24歳[20-30歳]、平均body mass index 22.4kg/m2[18.9-26.5kg/m2 ]) |
| 方法 | 朝に、ラベルマーカーを含む1600-kJのリキッドおよび固形食(80gのパン、120gのオムレツ、200gの水)を10分で摂取後、ラベルマーカーが小腸から検出されなくなるまで、30分間隔でガンマカメラにて確認した。翌日からは、24時間毎にラベルマーカーが結腸から排出するまでガンマカメラで確認し、結腸通過時間を測定した。なお、水に111In-DTPAを加え、99mTcはオムレツに加え、ラベルマーカーとした。 |
| Limitation | 当試験のlimitationとして、身体活動レベル、食習慣、心理的要因のばらつきが、結果に影響を与えた可能性があること、若年女性の胃排出評価が月経周期を考慮した時期に行われなかったことなどが挙げられる。 |
監修者コメント
便秘はよく知られた一般的な症状であり、従来は、生命を脅かすようなものではないとされてきましたが、Chang JY(海外データ)5)やSumida K6)らの報告などから、近年では、便秘は生命予後に影響すると考えられてきています。
我々の研究から、便秘症を合併した急性非代償性心不全患者は、全般的な生存率、心血管疾患に対する生存率ともに低くなる可能性があることを紹介しました。
心不全患者には便秘症の併存がよく見られますが、その理由として次のようなものが考えられています。
① 交感神経の亢進により腸管への血流が低下しており、腸管運動が障害され便秘が引き起こされる(海外データ)7)。
② 高齢の患者が多く、高齢であること自体が便秘のリスクファクターとなっている(海外データ)8)。
③ 水分摂取制限や利尿薬の服用により全身の水分量が減少していることから、便の水分量も減少している(海外データ)9,10)。
実際、我々の研究において、傾向スコアマッチング法によりマッチさせる前の患者の背景をみると、便秘症合併群は、便秘症非合併群に比べ、年齢、一部の利尿薬の処方率が有意に高くなっていました(年齢:p<0.001、Mann-Whitney U検定、ループ利尿薬の処方率:p=0.033、Fisher’s正確確率検定、トルバプタンの処方率:p<0.001、Fisher’s正確確率検定)。しかし、これらの因子も含めてマッチさせた両群の死亡率を比較したところ、便秘症合併群で高い結果となったことから、便秘症は心不全患者の死亡率に関与する独立したリスクファクターになりうることが示唆されました。
心不全の予後に影響を与える基礎疾患として、糖尿病、脂質異常症、高血圧などがよく知られています。国際的なガイドライン(「ESC診療ガイドライン 急性・慢性心不全管理2023」11))でも、これらの合併症を有する患者への対策の重要性が強調されています(海外データ含む)11-14)。しかし、当研究の結果から、便秘症の合併についても留意すべきと考えます。また、今回ご紹介しましたように、このたび改訂された「2025年改訂版心不全診療ガイドライン」4)においても、はじめて便秘に関する記載が設けられ、注意喚起が図られています。
心不全と診断し、さらに予後の悪化を確認した際には便秘症の合併も考慮する必要があります。便秘症を合併していれば、便秘症に対する早期介入、すなわち、食事療法、運動療法、そして薬物療法などの実施を検討することは、心不全治療の一環として重要ではないかと考えます。
2026年6月作成
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治療継続のコツ 治療段階を患者さんと共有する
医師と便秘症患者さんとの間には治療への意識の差がある。便秘の不快症状を訴える患者さんへの正しい治療の啓発が求められている。
整形外科における便秘について
ロコモティブシンドロームは大きな活動性低下を招き、便秘を誘発する可能性がある。また、関節症の疼痛治療においては副作用としての便秘を予防する必要がある。
緩和ケアにおける便秘治療のポイントとは
緩和ケアで起こる便秘の原因は様々であり、体力の温存の観点からも排便コントロールが難しく、QOLに大きな影響を与える。身体状態、食事摂取量や便秘の症状に合わせた便秘治療が求められる。
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