| 対象・方法 | 笠寺精治寮病院の女性療養病棟に入院中の精神疾患患者のうち、便秘症の診断がついており、かつ、様々な理由で終日オムツ着用を余儀なくされている19名(年齢 Mean[SD]74.8歳[9.3])を調査対象とした。 2025年3月6日~同4月5日までの計32日間の看護記録より、緩下剤の種類、服薬タイミング、オムツ交換の回数、交換に要した時間(皮膚清拭、衣類交換、シーツ交換も含む)を後方視的に調査後、匿名化して検討した。 また、当病棟に勤務している看護師13名(女性:12名、男性:1名)を対象に、オムツ交換を行うことに対する心理的負担感、時間的負担感について、0~100のVAS値で評価する自記式アンケートを用いて調査した。 当病棟の排便確認は日勤帯である9時、11時、14時、16時、夜勤帯である21時、5時に定期的に行われており、排便確認後、オムツ交換を行うこととしている。 |
| Limitation | 単施設の少数の限定した患者、および看護師を対象とした調査であり、この結果に精神科病院の排便管理の実態、看護師の意見が反映されているとするには限界がある。 |
図2. オムツ交換の時間別「心理的負担」
図2. オムツ交換の時間別「心理的負担」
図3. オムツ交換の時間別「時間的負担」
図3. オムツ交換の時間別「時間的負担」
監修者コメント
笠寺精治寮病院の女性療養病棟に入院中の便秘症を有する精神疾患患者と、その排便管理を行う看護師を対象として、排便管理の実態、看護師の負担感を調査しました。その結果、夜勤帯にあたる早朝5時のオムツ交換の回数が最も多く、また、夜勤帯に平均2.2名で対応する看護師の心理的、時間的負担が大きいことがうかがえました。
また、緩下剤の服用状況について調査したところ、『便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症』4)(以下ガイドライン)においてオンデマンド治療の位置づけとなっている刺激性下剤を定期服用している患者が19名中17名(89.5%)おり、さらにこれらを10名の患者が20時に服用していることが明らかとなりました。
刺激性下剤の一つであるセンノシドは服用後8~10時間で作用がある(海外データ)5)とされており、これを20時に服用すれば、夜勤帯に該当する早朝5時までに排便している可能性も高く、この時間帯に少ない人員で対応する看護師の負担感も当然大きくなるであろうと考えられます。
Kawamataらは、多くの精神科病院ではガイドラインで示された適切な便秘症治療が行われているとはいいがたい現状にある6)ことを報告しています。
ガイドラインに則った緩下剤の処方にシフトしていくこと、そして緩下剤の効能効果のみならず作用時間も考慮した服薬タイミングを工夫し、日勤帯に排便するような排便タイミングのコントロールができれば、治療を受ける精神疾患患者、ケアに当たる看護師双方の負担軽減につながるのではないかと考えます。
高齢者と若年者での結腸通過時間
| 対象 | デンマークの健康高齢者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢81歳[74-85歳]、平均body mass index 25.0kg/m2[21.6-29.7kg/m2])と健康若年者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢24歳[20-30歳]、平均body mass index 22.4kg/m2[18.9-26.5kg/m2 ]) |
| 方法 | 朝に、ラベルマーカーを含む1600-kJのリキッドおよび固形食(80gのパン、120gのオムレツ、200gの水)を10分で摂取後、ラベルマーカーが小腸から検出されなくなるまで、30分間隔でガンマカメラにて確認した。翌日からは、24時間毎にラベルマーカーが結腸から排出するまでガンマカメラで確認し、結腸通過時間を測定した。なお、水に111In-DTPAを加え、99mTcはオムレツに加え、ラベルマーカーとした。 |
| Limitation | 当試験のlimitationとして、身体活動レベル、食習慣、心理的要因のばらつきが、結果に影響を与えた可能性があること、若年女性の胃排出評価が月経周期を考慮した時期に行われなかったことなどが挙げられる。 |
2026年7月作成
抑うつ/不安を抱える労働者の便秘症について
【監修】東北大学先端ビーム科学研究センター研究教授/石巻赤十字病院心療内科 一般社団法人日本神経消化器病学会理事長 福土 審 先生
統合失調症の治療におけるベンゾジアゼピン系薬剤の処方と下剤使用のリスクの関係
【監修】国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神疾患病態研究部 部長 橋本 亮太 先生
便秘症は、心筋梗塞患者の心不全による再入院に影響を及ぼす可能性があります。
【監修】仙台市医療センター 仙台オープン病院 循環器内科 主任部長 浪打 成人 先生
便秘症が急性非代償性心不全患者の生存率に及ぼす影響[Kochi YOSACOI Study]
【監修】名古屋市立大学 大学院薬学研究科/薬学部/臨床薬学分野/臨床薬学教育研究センター 講師 石田 智滉 先生、高知大学医学部 老年病・循環器内科学講座 教授 北岡 裕章 先生、高知大学医学部附属病院薬剤部 教授・薬剤部長 浜田 幸宏 先生
便秘の問診のコツ『便意』を聞き出す(ショート版)
【監修】国際医療福祉大学成田病院 緩和医療科 部長 結束 貴臣 先生
便秘の問診のコツ『便意』を聞き出す
【監修】国際医療福祉大学成田病院 緩和医療科 部長 結束 貴臣 先生
慢性便秘症座談会2025
【司会】国際医療福祉大学 消化器内科統括教授/熱海病院 病院長 中島 淳 先生【パネリスト】川崎医科大学 検査診断学(内視鏡・超音波) 教授 眞部 紀明 先生、九州大学大学院 医学研究院 病態制御内科学 准教授 伊原 栄吉 先生
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」発刊を受けて
【監修】国際医療福祉大学 消化器内科統括教授/熱海病院 病院長 中島 淳 先生
【対談】精神科における便秘症診療を考える
横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島 淳 先生/医療法人 静心会 桶狭間病院 藤田こころケアセンター 病院長 藤田 潔 先生
精神疾患と便秘の関係性
不適切な排便コントロールの影響
【監修:看護師】医療経営コンサルタント 田中 智恵子 先生
統合失調症患者の下剤使用開始に関連する因子の検討:レトロスペクティブコホート研究
【監修】獨協医科大学 精神神経医学講座 講師 川俣 安史 先生
精神科外来患者における便秘症の有病率とリスク因子の検討
【監修】医療法人社団 心緑会 小石川メンタルクリニック 院長 山田 浩樹 先生
心血管イベントにおける排便管理の重要性
【監修】自治医科大学内科学講座 循環器内科学部門 教授 苅尾 七臣 先生
排便頻度と心血管疾患による死亡率との関連
【監修】熊本大学大学院 生命科学研究部 循環器内科学 教授 辻田 賢一 先生
便秘は急性心不全患者の心不全再入院リスクを高める可能性があります
【監修】仙台市医療センター 仙台オープン病院 循環器内科 主任部長 浪打 成人 先生
慢性便秘症診療に直腸エコー観察は有用か? 【2】直腸エコー観察に基づいた治療アルゴリズム
【監修】横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島 淳 先生
慢性便秘症診療に直腸エコー観察は有用か? 【1】病態機能評価における有用性
【監修】横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島 淳 先生
「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」のポイント グーフィス®とモビコール®の紹介を含めて
【監修】九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学(第三内科)准教授 伊原 栄吉 先生
「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」とグーフィスⓇのエビデンス
【監修】国際医療福祉大学 消化器内科統括教授/熱海病院 病院長 中島 淳 先生
治療継続のコツ 治療段階を患者さんと共有する
医師と便秘症患者さんとの間には治療への意識の差がある。便秘の不快症状を訴える患者さんへの正しい治療の啓発が求められている。
整形外科における便秘について
ロコモティブシンドロームは大きな活動性低下を招き、便秘を誘発する可能性がある。また、関節症の疼痛治療においては副作用としての便秘を予防する必要がある。
緩和ケアにおける便秘治療のポイントとは
緩和ケアで起こる便秘の原因は様々であり、体力の温存の観点からも排便コントロールが難しく、QOLに大きな影響を与える。身体状態、食事摂取量や便秘の症状に合わせた便秘治療が求められる。
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