排便管理の実態と看護師の負担感~神科科病院における調査

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【監修】医療法人交正会 笠寺精治寮病院 院長 森 康浩 先生
精神疾患患者は、向精神薬の有害事象、ADLの低さなど、様々な理由から便秘症の合併率が高いと考えられています1)。近年、便秘症患者は循環器疾患で死亡するリスクが高い2)ことや、便秘症の患者は便秘症ではない患者に比べ生存率が低い[海外データ]3)ことなども報告されており、精神疾患患者の排便管理は非常に重要なものとなっています。
また、入院している精神疾患患者の排便管理においては、実際にその業務を担う看護師の負担感も無視できません。
精神疾患患者の排便状況はどうなっているのか、これに対して看護師はどのような負担感をもって対応しているのか。その実態を把握することを目的として、笠寺精治寮病院の女性療養病棟に入院している便秘症の精神疾患患者、および同病棟に勤務する看護師を対象とした調査を行いましたので報告します。
1)中村祐:臨床精神医学 2025; 54(4): 359-364
2)Honkura K, et al.: Atherosclerosis 2016; 246: 251-256
3)Joseph YC, et al.: Am J Gastroenterol: 2010; 105(4): 822-832

試験概要

対象・方法 笠寺精治寮病院の女性療養病棟に入院中の精神疾患患者のうち、便秘症の診断がついており、かつ、様々な理由で終日オムツ着用を余儀なくされている19名(年齢 Mean[SD]74.8歳[9.3])を調査対象とした。
2025年3月6日~同4月5日までの計32日間の看護記録より、緩下剤の種類、服薬タイミング、オムツ交換の回数、交換に要した時間(皮膚清拭、衣類交換、シーツ交換も含む)を後方視的に調査後、匿名化して検討した。
また、当病棟に勤務している看護師13名(女性:12名、男性:1名)を対象に、オムツ交換を行うことに対する心理的負担感、時間的負担感について、0~100のVAS値で評価する自記式アンケートを用いて調査した。
当病棟の排便確認は日勤帯である9時、11時、14時、16時、夜勤帯である21時、5時に定期的に行われており、排便確認後、オムツ交換を行うこととしている。
Limitation 単施設の少数の限定した患者、および看護師を対象とした調査であり、この結果に精神科病院の排便管理の実態、看護師の意見が反映されているとするには限界がある。

結果

緩下剤の服用状況

患者19名中18名(94.7%)が緩下剤を定期服用していた。刺激性下剤を定期服用している患者は19名中17名(89.5%)であり、これらを眠前(20時)に定期服用している患者は10名であった。
表1. 定期処方されている緩下剤
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※併用例を含む
森康浩ら:最新精神医学 2026; 31(2): 141-147より改変

●各薬剤の使用にあたっては、電子添文をご確認ください。

オムツ交換の実態

患者19名に対して、看護師が32日間に、排便を確認しオムツ交換を行った各排便確認時間別の回数は図1の通りであった。また、オムツ交換に要した時間、時間別看護師数なども含め、オムツ交換の実態について表2にまとめた。
図1. 看護師がオムツ交換をした時間と回数
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森康浩ら:最新精神医学 2026; 31(2): 141-147より改変
表2. オムツ交換の実態
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¹日勤帯(9時~16時) ²夜勤帯(21時~9時)
森康浩ら:最新精神医学 2026; 31(2): 141-147より改変

オムツ交換に対する看護師の負担感

排便を確認しオムツ交換を行うことに対する「心理的負担」、「時間的負担」について、排便確認時間別にVAS値で回答を求めたところ、図2、3に示す結果となった。
  • 図2. オムツ交換の時間別「心理的負担」

    図2. オムツ交換の時間別「心理的負担」

    *p<0.05 vs 9時(Mann-Whitney U-test)
    森康浩ら:最新精神医学 2026; 3(1 2): 141-147より改変
  • 図3. オムツ交換の時間別「時間的負担」

    図3. オムツ交換の時間別「時間的負担」

    *p<0.05 vs 5時(Mann-Whitney U-test) **p<0.05 vs 21時~5時(Mann-Whitney U-test)
    森康浩ら:最新精神医学 2026; 3(1 2): 141-147より改変

監修者コメント

笠寺精治寮病院の女性療養病棟に入院中の便秘症を有する精神疾患患者と、その排便管理を行う看護師を対象として、排便管理の実態、看護師の負担感を調査しました。その結果、夜勤帯にあたる早朝5時のオムツ交換の回数が最も多く、また、夜勤帯に平均2.2名で対応する看護師の心理的、時間的負担が大きいことがうかがえました。
また、緩下剤の服用状況について調査したところ、『便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症』4)(以下ガイドライン)においてオンデマンド治療の位置づけとなっている刺激性下剤を定期服用している患者が19名中17名(89.5%)おり、さらにこれらを10名の患者が20時に服用していることが明らかとなりました。
刺激性下剤の一つであるセンノシドは服用後8~10時間で作用がある(海外データ)5)とされており、これを20時に服用すれば、夜勤帯に該当する早朝5時までに排便している可能性も高く、この時間帯に少ない人員で対応する看護師の負担感も当然大きくなるであろうと考えられます。
Kawamataらは、多くの精神科病院ではガイドラインで示された適切な便秘症治療が行われているとはいいがたい現状にある6)ことを報告しています。
ガイドラインに則った緩下剤の処方にシフトしていくこと、そして緩下剤の効能効果のみならず作用時間も考慮した服薬タイミングを工夫し、日勤帯に排便するような排便タイミングのコントロールができれば、治療を受ける精神疾患患者、ケアに当たる看護師双方の負担軽減につながるのではないかと考えます。

4)日本消化管学会編:便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症, 2023, 南江堂
5)Piegsa-Quischott I: Aerztl Wschr 1954; 9(21): 499-502
6)Kawamata Y, et al.: Neuropsychopharmacology Reports 2024; 44: 60-66
【各ステージにおける便秘症の憂慮】
①向精神薬の副作用、ストレス、運動不足等により腸管運動が低下し、便秘症が多発する4~6)
②便秘症状を訴えられないことによる治療開始の遅延、刺激性下剤の連用・摘便、浣腸処置による患者や看護スタッフの負担が増加する(海外データを含む)8~11)
③上記治療による便秘症の難治化、便秘症自体が精神疾患を更に悪化させる可能性がある(海外データを含む)12),13)
精神疾患患者を取り巻く様々な要因で、便秘症状悪化のサイクルに陥り、イレウスの発生に繋がる恐れがある

高齢者は若年者に比して、結腸通過時間の有意な延長が認められました(p=0.0008、重回帰分析)。

グラフ/縦軸が平均結腸通過時間、横軸が高齢者、若年者

高齢者と若年者での結腸通過時間

Madsen JL, et al.: Age and Ageing 2004; 33(2): 154-159より作成
表/高齢者および若年者における消化管運動の評価結果と年齢、性差、BMIおよび喫煙が消化管運動に与える影響
対象 デンマークの健康高齢者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢81歳[74-85歳]、平均body mass index 25.0kg/m2[21.6-29.7kg/m2])と健康若年者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢24歳[20-30歳]、平均body mass index 22.4kg/m2[18.9-26.5kg/m2 ])
方法 朝に、ラベルマーカーを含む1600-kJのリキッドおよび固形食(80gのパン、120gのオムレツ、200gの水)を10分で摂取後、ラベルマーカーが小腸から検出されなくなるまで、30分間隔でガンマカメラにて確認した。翌日からは、24時間毎にラベルマーカーが結腸から排出するまでガンマカメラで確認し、結腸通過時間を測定した。なお、水に111In-DTPAを加え、99mTcはオムレツに加え、ラベルマーカーとした。
Limitation 当試験のlimitationとして、身体活動レベル、食習慣、心理的要因のばらつきが、結果に影響を与えた可能性があること、若年女性の胃排出評価が月経周期を考慮した時期に行われなかったことなどが挙げられる。
Madsen JL, et al.: Age and Ageing 2004; 33(2): 154-159

2026年7月作成

便秘診療のコツ

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