災害時超急性期における必須医薬品リスト

【解説】福岡大学 薬学部 健康危機管理薬学研究室 教授 江川 孝 先生
我が国は、地理的、地質的、気象的条件などから、元来、自然災害が発生しやすい国と言えます。東日本大震災、熊本地震、能登半島地震などの規模の大きな地震、毎年のように全国様々な場所で発生する「これまで経験したことのない」豪雨や洪水、竜巻、山林火災の頻発等々、地域に暮らす多くの人々に甚大な被害をもたらした災害は、記憶に新しいのではないでしょうか。
その時、どうするか。立て続く災害は、国家レベルの対策のみならず、一般市民の防災意識をも高めていますが、災害に対する備えは、医療においてはことさらに重要です。
日本災害医学会では、「災害時超急性期における必須医薬品リスト」を作成しています。ぜひ参考にしていただき、災害時における医療機関の役割の重要性について、思いを新たにしていただければと思います。

日本災害医学会 災害時超急性期における必須医薬品リスト(DMATによる救命救急医療用医薬品を除く)

JADM 一般社団法人 日本災害医学会HP 災害時超急性期における必須医薬品リスト(DMATによる救命救急医療用医薬品を除く) https://jadm.or.jp/contents/model/(2026年4月閲覧)より
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JADM 一般社団法人 日本災害医学会HP 災害時超急性期における必須医薬品リスト(DMATによる救命救急医療用医薬品を除く) https://jadm.or.jp/contents/model/(2026年4月閲覧)より
【各ステージにおける便秘症の憂慮】
①向精神薬の副作用、ストレス、運動不足等により腸管運動が低下し、便秘症が多発する4~6)
②便秘症状を訴えられないことによる治療開始の遅延、刺激性下剤の連用・摘便、浣腸処置による患者や看護スタッフの負担が増加する(海外データを含む)8~11)
③上記治療による便秘症の難治化、便秘症自体が精神疾患を更に悪化させる可能性がある(海外データを含む)12),13)
精神疾患患者を取り巻く様々な要因で、便秘症状悪化のサイクルに陥り、イレウスの発生に繋がる恐れがある
注1:青字部分は、列記した医薬品を使用するにあたって必要と考えられる機器・検査キット・補助具などである。
注2:1. 本リストは、医療救護所/避難所等で被災直後(発災直後から最長10日間程度)に最低限必要と考えられる医薬品をリストしたもので、DMATによる救命救急医療用医薬品を除く。
2. 医療救護所/避難所となると想定される場所もしくは地域での備蓄、被災地外から被災直後に当該地域へ医薬品問屋が供給もしくはDMATを除く医療チームが携行することを想定している。
3. 精神科、婦人科等の専門医が携行する医薬品は、それぞれの専門医の判断に委ねる。
4. 注射薬は、被災直後の状況を勘案し、プレフィルドタイプを推奨している。予算上の制約などからプレフィルド以外の製品とするなど、柔軟に対応されたい。
5. 医薬品名は、一般名と代表的な商品名を記載している。同一成分の他の製品に切り替えることを否定するものではないが、できる限り同一の外観のものが現場で供給されることが患者の混乱を防ぐことから、原則、先発品を優先とすることが望ましいと考えている。
6. 医療用として、服薬、吸入薬使用後のうがい、消毒薬調製等のため、清潔な水を備蓄もしくは持参する必要がある。
7. アドレナリン注0.1%シリンジ、メイロン静注7%、ソセゴン注射液15mg(施錠管理が必要)などを含む蘇生キットを医療チームが携行することを勧める。
8. 資機材として、オルソグラス、切断用ハサミ、ヘムコンガーゼケアなどを検討されたし。

高齢者は若年者に比して、結腸通過時間の有意な延長が認められました(p=0.0008、重回帰分析)。

グラフ/縦軸が平均結腸通過時間、横軸が高齢者、若年者

高齢者と若年者での結腸通過時間

Madsen JL, et al.: Age and Ageing 2004; 33(2): 154-159より作成
表/高齢者および若年者における消化管運動の評価結果と年齢、性差、BMIおよび喫煙が消化管運動に与える影響
対象 デンマークの健康高齢者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢81歳[74-85歳]、平均body mass index 25.0kg/m2[21.6-29.7kg/m2])と健康若年者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢24歳[20-30歳]、平均body mass index 22.4kg/m2[18.9-26.5kg/m2 ])
方法 朝に、ラベルマーカーを含む1600-kJのリキッドおよび固形食(80gのパン、120gのオムレツ、200gの水)を10分で摂取後、ラベルマーカーが小腸から検出されなくなるまで、30分間隔でガンマカメラにて確認した。翌日からは、24時間毎にラベルマーカーが結腸から排出するまでガンマカメラで確認し、結腸通過時間を測定した。なお、水に111In-DTPAを加え、99mTcはオムレツに加え、ラベルマーカーとした。
Limitation 当試験のlimitationとして、身体活動レベル、食習慣、心理的要因のばらつきが、結果に影響を与えた可能性があること、若年女性の胃排出評価が月経周期を考慮した時期に行われなかったことなどが挙げられる。
Madsen JL, et al.: Age and Ageing 2004; 33(2): 154-159

監修者コメント

「災害時超急性期における必須医薬品リスト(DMATによる救命救急医療用医薬品を除く)」は、医療救護所/避難所等で被災直後(発災直後から最長10日間程度)に最低限必要と考えられる医薬品をリスト化したものです。災害に備え、どのような医薬品が必要となるのか、それらはいつどのように使うのか、リストにある医薬品を準備したり、電子添文等も確認したりするなど、不測の事態に備えた準備を進めていただければと思います。
「災害時超急性期における必須医薬品リスト」は最新の医療動向や社会的なニーズに応じて不定期に改訂が行われており、このたび2026年改訂版が公表されました。
今回の改訂では、緩下剤として、従来の刺激性下剤に代わって、酸化マグネシウム製剤、新規作用機序をもつエロビキシバットが新たに掲載されたことがポイントの一つです。
避難所生活では、栄養の偏りや水分不足、運動不足になりがちで、これらは便秘症を誘発する原因になり得ます。また、環境の変化や精神的なストレスなども便秘症を誘発すると考えられています。加えて、便秘症は、心血管疾患、糖尿病、腎疾患、消化管疾患などとも相互に悪影響を及ぼしあうことも報告されています1~4)ので注意が必要です。
「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」では、薬物療法として、酸化マグネシウム製剤などの浸透圧性下剤を使用しても便秘症の改善がみられなければ、エロビキシバットなどの新規作用機序を持つ薬剤を投与することが推奨されており、これらの緩下剤のリストへの掲載は、最新の便秘症治療を踏まえた適切なアップデートであると考えられます。

1)Honkura K, et al.:Atherosclerosis 2016;246:251-256
2)Ihana-Sugiyama N, et al.:World J Gastroenterol 2016;22(11):3252-3260
3)Yasuda G, et al.:Am J Kidney Dis 2002;39(6):1292-1299
4)Ogasawara N, Kasugai K, et al.:J Neurogastroenterol Motil 2022;28(2):291-302(本研究はEAファーマ株式会社の支援を受けて実施された)

2026年9月作成

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