認知症疾患診療ガイドライン2026発刊と、Lewy小体型認知症(DLB)の自律神経症状における便秘の治療に関する記載について

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【監修】川崎医科大学 認知症学 教授 川崎医科大学高齢者医療センター 高齢者総合診療科 部長 和田 健二 先生

監修者コメント

このほど認知症疾患診療ガイドラインが改訂、発刊された。前回の2017年から9年ぶりの改訂となる。この間、認知症診療をとりまく医療や法制度、社会的な関心などのさまざまな環境に変化がみられた。
特に大きな変化のポイントとしては、

  • 抗アミロイドβ抗体薬であるレカネマブ(2023年承認)、ドナネマブ(2024年承認)が上市され、アルツハイマー病連続体(ADコンティニュアム)の概念を導入、軽度認知障害(MCI)が治療対象となったこと
  • 認知症基本法(正式名称:共生社会の実現を推進するための認知症基本法)が2024年に成立し、認知症を社会全体で支える必要性が求められていること
等があげられ、今回の改訂もこれらを踏まえたアップデートがなされている。
また、認知症には、中核症状以外の様々な周辺症状(便秘等)があり、その治療においては、多様な領域の最新の知見も必要になる。今回の改訂では、そのような点についても更新が図られている。
例えば、Lewy小体型認知症(DLB)の自律神経症状の便秘については2017年版でも解説がなされていたが、今回の改訂では、2023年に発刊された「便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症」の内容が盛り込まれ、2017年以降に上市された新規作用機序をもつ便秘症治療薬や治療アルゴリズム、近年問題となっている高マグネシウム血症に対する注意喚起なども記載されている。以下、抜粋して紹介する。

参考 認知症疾患診療ガイドライン2026 内容構成
第1章 認知症全般:疫学,定義,用語 第2章 症候,評価尺度,診断,検査 第3章 治療 A.非薬物療法・薬物療法 B.認知症の行動・心理症状に対する治療 C.合併症・併存症への対応 第4章 経過とその対応 A.認知症の危険因子・防御因子 B.軽度認知障害 C.重症度と重症度別対応 第5章 認知症の人の生活を支えるための諸制度と社会資源 A. 認知症者の医療・介護を支えるための諸制度と社会資源 B.介護保険制度 C.権利擁護 D.若年性認知症 E.道路交通法 第6章 Alzheimer型認知症 第7章 Lewy小体型認知症 第8章 前頭側頭葉変性症 第9章 その他神経変性疾患 A. 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症 B.嗜銀顆粒病 C. 神経原線維変化型老年期認知症 D. Huntington病E. 神経核内封入体病 第10章 血管性認知症 第11章 プリオン病 第12章 特発性正常圧水頭症 第13章 内科的疾患

BQ7-8
Lewy小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)の自律神経症状(起立性低血圧,便秘,発汗,排尿障害など)の治療法はあるか

ステートメント

DLBの自律神経症状は認知症に先行して生じ,起立性低血圧,便秘,発汗,排尿障害など多彩である。まず誘因を避け,非薬物療法を行う。また,併用薬剤にも注意し,必要に応じて薬物療法を行う。

解説・エビデンス

DLBの自律神経症状は比較的高頻度にみられ,106人のDLB患者を対象としたScales for Outcomes in Parkinson’s disease-Autonomic Dysfunction(SCOPA-AUT)質問表によれば,便秘は60.4%,立ちくらみ33%,尿意促迫30.2%,日中の発汗過多22.6%などが報告されており,これらの自律神経症状はDLBの認知機能低下発症に先立って生じていた1)。本邦での29例のDLB患者を対象とした調査では尿失禁(97%)と便秘(83%)の頻度が高く,起立性低血圧は66%であり,28%で失神の既往があることが報告されている2)DLBの起立性低血圧,便秘,発汗異常,排尿障害など自律神経を対象としたランダム化比較試験(RCT)は存在しないが,Parkinson病(PD)あるいは認知症を伴うParkinson病(PDD)などαシヌクレイノパチーと共通点が多いため,DLBの自律神経症状に対する治療はPDに対する治療に準じて行う3)。これらは主に末梢の自律神経障害によることが多く,心臓交感神経節後線維の脱落,機能障害を反映するMIBG心筋シンチグラフィはDLBでも低下する(BQ7-3 参照)。
1) Hu W, et al.: Parkinsonism Relat Disord 2022; 95: 1-4
2) Horimoto Y, et al.: J Neurol 2003; 250: 530-533
3) 日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン作成委員会 編, パーキンソン病診療ガイドライン2018, 医学書院, 2018
「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会 編, 認知症疾患診療ガイドライン2026, 医学書院, 2026, P.287より 許諾を得て転載

2. 便秘の治療(図1)

DLBの便秘はPDと共に頻度が高い症状であり,約30~83%の患者でみられる。PD同様,多くは腸管の自律神経障害による蠕動低下に伴う機能性便秘症である。併用薬剤でオピオイド系薬剤の使用があれば,まず中止する。機能性便秘に対しては十分な食物繊維と水分の摂取を行い,改善がなければ酸化マグネシウム,ポリエチレングリコール(PEG)などの浸透圧性下剤を用いる。高齢者,腎機能障害例では酸化マグネシウムは高マグネシウム血症に伴う脱力や嘔気,食欲不振,徐脈などに注意する。改善がなければルビプロストン,リナクロチドなどの腸上皮変容薬,エロビキシバットなどの胆汁酸トランスポーター阻害薬を使用し,代替薬として大建中湯などの漢方薬やプロバイオティクスを使用する。また消化管蠕動運動改善目的にてクエン酸モサプリドやドンペリドンを投与してもよい。センナ・センノシドなどの刺激性下剤は頓用で用い,無効な場合坐薬,浣腸,摘便などの処置を要する4)。DLBではPDと同様,麻痺性イレウスに注意する。
4)日本消化管学会 編, 便通異常症診療ガイドライン2023-慢性便秘症, 南江堂, 2023
「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会 編, 認知症疾患診療ガイドライン2026, 医学書院, 2026, PP.288-289より 許諾を得て転載
図1 便秘・麻痺性イレウスの予防・治療アルゴリズム
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「認知症疾患診療ガイドライン」作成委員会 編, 認知症疾患診療ガイドライン2026, 医学書院, 2026, P.288より 許諾を得て転載
【各ステージにおける便秘症の憂慮】
①向精神薬の副作用、ストレス、運動不足等により腸管運動が低下し、便秘症が多発する4~6)
②便秘症状を訴えられないことによる治療開始の遅延、刺激性下剤の連用・摘便、浣腸処置による患者や看護スタッフの負担が増加する(海外データを含む)8~11)
③上記治療による便秘症の難治化、便秘症自体が精神疾患を更に悪化させる可能性がある(海外データを含む)12),13)
精神疾患患者を取り巻く様々な要因で、便秘症状悪化のサイクルに陥り、イレウスの発生に繋がる恐れがある

●各薬剤の使用にあたっては、電子添文をご確認ください。

高齢者は若年者に比して、結腸通過時間の有意な延長が認められました(p=0.0008、重回帰分析)。

グラフ/縦軸が平均結腸通過時間、横軸が高齢者、若年者

高齢者と若年者での結腸通過時間

Madsen JL, et al.: Age and Ageing 2004; 33(2): 154-159より作成
表/高齢者および若年者における消化管運動の評価結果と年齢、性差、BMIおよび喫煙が消化管運動に与える影響
対象 デンマークの健康高齢者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢81歳[74-85歳]、平均body mass index 25.0kg/m2[21.6-29.7kg/m2])と健康若年者16例( 男性8例、女性8例、平均年齢24歳[20-30歳]、平均body mass index 22.4kg/m2[18.9-26.5kg/m2 ])
方法 朝に、ラベルマーカーを含む1600-kJのリキッドおよび固形食(80gのパン、120gのオムレツ、200gの水)を10分で摂取後、ラベルマーカーが小腸から検出されなくなるまで、30分間隔でガンマカメラにて確認した。翌日からは、24時間毎にラベルマーカーが結腸から排出するまでガンマカメラで確認し、結腸通過時間を測定した。なお、水に111In-DTPAを加え、99mTcはオムレツに加え、ラベルマーカーとした。
Limitation 当試験のlimitationとして、身体活動レベル、食習慣、心理的要因のばらつきが、結果に影響を与えた可能性があること、若年女性の胃排出評価が月経周期を考慮した時期に行われなかったことなどが挙げられる。
Madsen JL, et al.: Age and Ageing 2004; 33(2): 154-159

2026年8月作成

便秘診療のコツ

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